1年間すべてに「イエス」と言った女性から日本人が学べること
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<ヒラリー・クリントンが大統領選で何度も言及した「ガラスの天井」。女性の地位向上を阻むその壁を打ち破っているのが、米エンタメ界で活躍する脚本家ションダ・ライムズだ。彼女は「1年間あらゆることにイエスと言おう」と決め、そこから全世界の女性に向けた『YES ダメな私が最高の人生を手に入れるまでの12カ月』が生まれた> (写真:ションダ・ライムズ、2016年2月)
ガラスの天井(glass ceiling)――女性(現在は、女性だけでなくマイノリティも含む)の昇進や地位向上を阻む、見えない壁を意味する言葉だ。2016年にこの言葉を最も印象深い形で使った女性は、ヒラリー・クリントンだろう。
そもそもクリントンは、2008年の大統領選予備選でバラク・オバマに敗北した際、「今回は最も高く、最も堅固なガラスの天井を打ち破ることはできませんでしたが、皆さんのおかげで1800万ものヒビが入りました」と、この言葉を使っていた。そして2016年、7月26日の民主党全国大会で主要政党初の女性大統領候補に正式指名されると、「天井がなければ、可能性は無限大なのです」と再び効果的に使用したため、名文句として全米のメディアで大きく報じられたのだ。
さらに、大統領選でドナルド・トランプに敗北すると、クリントンは敗北宣言の中にもこの言葉を盛り込んだ。「私たちは最も高いあのガラスの天井を打ち破るには至っていません。それでもいつの日か、願わくば私たちの予想よりも早く、誰かが打ち破ってくれるでしょう」
【参考記事】女性政治家を阻む「ガラスの天井」は危機下にもろくなる
政界の女傑クリントンですら、こうして幾度となく言及せざるを得なかった「ガラスの天井」。その分厚いガラスの天井を自ら打ち破りながら、同胞である女性、ひいては有色人種やLGBTQ(性的マイノリティ)を支援しつづけている黒人女性がいる。テレビプロデューサー/番組制作総指揮監督/脚本家のションダ・ライムズだ。
彼女は、作品の登場人物がアメリカの現実世界と同じ構成になるよう、女性、有色人種、LGBTQの人々をテレビに多数起用した初めての脚本家として名を馳せている。また、熱烈なクリントン支持者として知られるライムズは、『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』『スキャンダル 託された秘密』『殺人を無罪にする方法』などのドラマを執筆・製作して立て続けに大ヒットを飛ばし、その才能と創造力のみで米国のエンタメ界の頂点に君臨している(ちなみに、ヒラリーの夫であるビル・クリントン元大統領もライムズの大ファンとして有名だ)。
1年間、イエスと言いつづけた過程をユーモラスに
そんなスリリングなフィクションの作者として知られるライムズが初めて執筆した自伝的エッセーが、『Yes ダメな私が最高の人生を手に入れるまでの12カ月』(筆者訳、あさ出版)である。ライムズは同書の冒頭で、「自分について書くだなんて、超人気のレストランでテーブルの上に立ち、『パンティをはいていないのよ』とドレスを持ち上げてみせるようなものだ」と語っているが、その言葉どおり、「強くて聡明な黒人女性」というパブリック・イメージからはかけ離れた「ごく普通の女性像」をさらけ出している。