最新記事

中国共産党

六中全会、党風紀是正強化――集団指導体制撤廃の可能性は?

2016年10月24日(月)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 なぜなら、「集団指導体制」というのは、もう少し正式に、憲法にもある文言を使って表現すれば「民主集中制」ということになるからだ。

「民主集中制」は、非常に分かりにくい概念であり、そこには中国共産党体制の「民主という言葉に対するまやかしがある」と思っているので、筆者はこれまで「集団指導体制」という言葉を使って解説してきた。その方が日本人に分かりやすいだろうという配慮もあったからだ。

「民主集中制」を言葉通りに言うならば、「民主を基礎として、集団(集中)と集中指導下における民主との結合制度」となる。何のことか分からないので、もう少し日本人的感覚から説明するなら「少数は多数意見に従い(多数決)、党の各レベルの委員会は集団指導と役割分担が結合した制度に従う。個人崇拝を禁止し、党の委員会で討議決議する」ということになる。

 これは要するに筆者がこれまで『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』などでくり返し説明してきた「集団指導体制」以外の何ものでもない。

 しかし、日本の報道は、この同一性を理解していないためか、「集団指導体制を堅持し、個人崇拝に反対する」と謳った1980年制定の「党内政治生活に関する若干の準則」を「新形勢」に合わせて見直すのだから、「集団指導体制を撤廃し、個人崇拝を許す」方向に行くにちがいないと憶測している。

 ところが、習近平政権が何度も会議を開き、最終的には2016年9月27日に開催した中共中央政治局会議で、10月に開催される六中全会の議題を決定し、そこで制定される「新形勢下の党内政治生活に関する若干の準則」の草稿に関して決議した。

 そこには明らかに「民主集中制」という言葉が存在している。

 つまり、六中全会で討議決議されることになっている「新形勢下における党内政治生活に関する若干の準則」には、「集団指導体制が盛り込まれている」ということになる。

 ただ、「集団指導体制」という言葉を「民主集中制」に変えて、また1980年に制定された同準則二条にある「集団指導体制を堅持し、個人崇拝に反対する」という露骨な表現をしていないだけである。

 したがって、六中全会で集団指導体制が撤廃されることはないと判断していいだろう。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 6
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中