イタリア中部、地震活動地帯でも歴史建造物と財政難で対策遅れる
安全基準
市民保護の専門家による2008年の調査によると、同国で最も被害を受けやすい中部では、わずか14%の建物しか耐震基準を満たしていなかった。
新しい建物の建築に関して、かなり厳しい基準が同年新たに設けられたが、ほとんどの家やオフィスは地震活動の危険にさらされたままだった。
イタリアの全国保険協会によって先月公表された報告書によると、同国の3分の2の地方自治体が地震帯に位置し、それと同じくらいの割合で建物も耐震性を備えていなかった。
「いくつかのことは改善された。しかし、もっとできるはずだ」と、地質研究所のトルトリーチ氏はロイターに対し、こう述べた。
「真の問題は、耐震基準がなかった1970年代以前に建造された建物にある。この国は、寿命に限りがあるセメントに覆われている」と同氏は言う。
中世から続くすべての村落とルネサンス時代の宮殿の魅力を奪うことなく、それらの耐震を強化するためにかかるばく大な費用を考えると、イタリア全土の古い建物を強化し、安全性を高めるどんな施策も激しい抵抗に遭うだろう。
トルトリーチ氏は、政府が全国的に安全性を高めるインセンティブを提供することができると語る。しかし、欧州最大規模の債務にあえぐなか、イタリアは民間セクターに気前の良い奨励策や、あらゆる公共建造物に安全対策を施すのに必要な大規模な投資を行えるほどの余裕はない。
65歳のアルティエロ・チナグリアさんは、アルクアータ・デル・トロント村でがれきに囲まれながら、日本式の安全基準をイタリアに導入することには悲観的なようだ。
「何をすればいいのか。新しい建物のために古い建物を取り壊すことなどできない。これらの街は夏は観光のために存在し、観光客は古くて美しい建造物を見たいと思っている」とチナグリアさんは話す。
「できることは何もない」
(Crispian Balmer記者 翻訳:高橋浩祐 編集:伊藤典子)