文革50周年と「フラワーズ56」の怪?――習近平政権に潜むリスク
文革は、ちょうど50年前の今日、1966年5月16日に、毛沢東が出した「516通知」から始まった。1976年まで続いた文革における犠牲者の数は、当時の中国政府発表で2000万人。
文革に対する総括(断罪)は40年前に出ているのだが、13億人以上もいる中国人民の中には、それに納得していない人々もいる。
今般の「フラワーズ56の怪」は、その不満をあぶり出したと言っていいだろう。
それが、徐々に中央に迫っているのかもしれない。
中共中央あるいは中国政府が法的に正しく調査し、一刻も早く真相が明らかになることが待たれる。
追記:最後にもう一つ、「知りたくないであろうこと」を書いておこう。
それは、日本人にはあまり知られていないと思うが、「人民大会堂はビジネスに使ってもいい」ことになっているという事実だ。筆者は何度か人民大会堂に出入りしたことがあるが、人民大会堂には管理局というのがあって、民間の使用を審査し許可する業務を行っている。今般のチケット代は一人1000元以上の座席もある。5千席が満席だったというから、それだけでも約1億円の収入になる。人民大会堂管理局とコネや賄賂関係がなかったかも、調査の対象とならなければならない。禁止されている文革の歌を聞きたいという民衆の願望をビジネス化したという要素は否めないのだ。チャイナ・セブン(習近平政権における中共中央政治局常務委員会委員7人)が会議を開き、すでに中共中央紀律検査委員会(王岐山書記)が調査に乗り出しているという。
ちなみにフラワーズ56の事務所名は北京詮声文化有限公司で、その法人は北京経典融商投資有限公司。この法人名は、最高人民法院(最高裁判所)のHPの「全国信用失墜法人リスト」の中にある。そして4月中旬に「中央宣伝部社会主義核心価値観宣伝教育弁公室が主宰する」という文言で地方の芸術学校に招聘状を出したのは、フラワーズ56の事務所・北京詮声文化有限公司であったと、その校長が証言している。犯人を見つけるのは、案外、早いかもしれない。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。