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文革50周年と「フラワーズ56」の怪?――習近平政権に潜むリスク

2016年5月16日(月)16時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 大躍進などの失敗と自然災害も手伝って、3000万人に上るといわれている餓死者を生んだ大失策の責任を問われて国家主席の座を失った毛沢東は、政府を転覆させるために文革を始めた。倒すべき最大の敵は、国家主席・劉少奇だった。

 年若い「紅衛兵」などを扇動して政府要人を倒させたのが文革の真髄である。

 これはボトムアップの力を持っている。若者が自由自在に壁新聞を貼ったりして、思いっきり政府批判をしたのが文革だ。

 毛沢東はもう一つ、人民にとって魅力的な言葉を投げかけている。

 それは「政府を人民に返せ!」「人民の最大の権利は、国家を管理することだ!」という言葉である。

 これほど人民を惹きつける言葉があるだろうか!

 現在の政府に失望している人民の一群は、この言葉を以て文革を礼賛しているのである。

 習近平政権にとって、これほど怖い言葉はない。

 習近平政権になってから、反日デモが起きていないことにお気づきだろうか? 反日デモは必ず「反政府デモ」につながることを胡錦濤政権で十分に学んだので、反日デモさえ絶対にさせない。その習近平が「文革」の再来を許すはずがないのである。

 それなのに習近平が毛沢東回帰をしたり、個人崇拝の傾向を強めたりするのは、一党支配体制が危なくなっていることの、何よりの証しだ。

 毛沢東の威を借り、反腐敗運動を展開して人民の求心力を高め、何とか自分の政権で一党支配体制が終わってしまわないように必死なのである。今回の「フラワーズ56事件」を含めて、これらを権力闘争と矮小化する報道や中国研究者が一部見られるが、そのような分析ばかり続けていたら、中国の実態は見えなくなってしまうだろう。ましていわんや、習近平が文革を起こそうとしていると分析することなど論外だ。あまりに中国を知らな過ぎる。

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