文革50周年と「フラワーズ56」の怪?――習近平政権に潜むリスク
同時に「中国歌劇舞劇院」も5月6日に同様の責任追及をネット公開。それによれば「この公演の準備と演出過程で、本院と関係のない虚構の"中央宣伝部社会主義核心価値観宣伝教育弁公室"が虚偽の資料を提供し、当方の信頼を損ねたことを、法に基づいて責任追及する」とある。
犯人は誰なのか?
では、このような大胆な虚構を築いたのは誰なのか?
文字通り「中宣部」ということになれば、国家を二分するくらいの大事件に発展するが、少なくとも「中宣部」自身である可能性はまずないと言っていいだろう。
そもそも「中央宣伝部社会主義核心価値観宣伝教育弁公室」などという組織が存在するのだろうか?
たしかに中宣部は2015年5月に「社会主義核心価値観建設宣伝教育工作培訓班」(培訓班=養成班)というものを設置はしている。それは全国に「社会主義の核心的価値観」を植え付けるために学習を奨励するための「培訓班」を設置せよという命令だった。しかしその「弁公室」というのは(少なくとも筆者は)聞いたことがない。この存在自体が怪しい。
中宣部自身が関与していたか否かに関して、元中央テレビ局CCTVで仕事をしていた古い友人に聞いてみた。中宣部の干渉に耐えられなくて、CCTVを辞めた友人だ。
彼女は「中宣部自身の可能性はゼロだ」と断言する。その証拠に5月2日夕方のCCTVの全国ニュース「新聞聯播」では一切報道していないと、URLを知らせてきた。ここは全て中宣部が仕切っている。
知り合いの中国政府関係者にも聞いてみたところ「実に悪質だ!」と怒りをぶちまけてきた。そして「中宣部は、このレベルの申請に対して、いちいち関与しない」と断言した。
ということは、その末端の下部組織か、あるいは虚偽の団体が「中央宣伝部社会主義核心価値観宣伝教育弁公室」の名を騙(かた)ったことになろうか。それに近い名前の「培訓班」はあるので、ついその名前の威力で、本物と勘違いしてしまったという可能性がある。
おそらく後者だろう。
だとすれば、そこに、中国社会の中における危なさと、一種の民意が見えてくる。
中国が抱えるリスクと一部の民意――文革の名を借りた反政府集団
実は中国には「文革礼賛派」など、いくらでもいるのだ。それは政府に不満を持っている人たちの中に潜り込んでいる。
文革というのは、毛沢東が「敵は司令部にあり!」と指示したように、「反政府的ベクトル」を持ったものである。