「世界の工場」中国に淘汰の兆し
経済成長の原動力となってきた製造業からの転換を図りたいが、消費者の職も必要という中国指導者のジレンマ
2月29日、春節(旧正月)の長い休暇を終えて、中国製造業の中心地に戻ってきた多くの出稼ぎ労働者は、先の見えない将来に直面している。写真は河北省の製鉄所で昨年11月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
春節(旧正月)の長い休暇を終えて、中国製造業の中心地に戻ってきた多くの出稼ぎ労働者は、先の見えない将来に直面している。とりわけ小規模な工場が、受注低迷と在庫増加に苦しんでいるからだ。
中国輸出の約4分の1を占め、「世界の工場」と称される広東省の珠江デルタ──。ここで働く労働者や経営者によれば、2週間に及ぶ春節休暇後の製造ラインの稼働ペースは、例年よりも緩やかだという。
同省東莞市にある西城工業区では、壊れた機械が散在し廃墟となった工場がいくつか見られる。また、工業用地とされる区画も、村人たちが野菜を作るために使われたりしている。これらは中国製品に対する需要が弱まっている兆しであり、事業閉鎖を強いられたり賃金を圧迫している。
「給料の良い工場を見つけるのが私たちの望み」と話すのは、1月に工場を解雇された18歳の女性。彼女は新たな仕事を求めて工場の門をたたく数多くの出稼ぎ労働者の1人だ。
「でも気を付けなくては。多くの工場が食事や住む場所を提供していない。給料の支払いも遅れていたりする。だまされたくない」と、この女性が話すと、一緒にいた友人4人はうなずいた。
こうした女性らの苦境は、これまで成長の原動力となってきた低価格製品を生み出す製造業からの転換をはかりたいが、次の成長基盤を支えてくれるであろう消費者の職も必要という中国指導者のジレンマを体現している。
また、産業が整理され労働者の福利も圧迫されるなか、労働運動家は混乱が起きるリスクを指摘する。
製造業の縮小
経済規模が一国のインドネシアよりも大きな広東省だが、その輸出の伸びは、政府による1月の報告書によれば、今年はわずか1%の見通しだという。