「世界の工場」中国に淘汰の兆し
輸出市場より国内需要に応える小さな工場が景気減速の打撃を最も受けているということは、中国の消費者が同国経済のリバランスで必要とされるほどには代わりを務めていないことを示すもう一つのシグナルだと、専門家は指摘する。
金融市場の安定化に躍起となり、昨年に成長率が過去25年で最も弱い6.9%まで減速している中国の政策当局者にとって、これは悪いニュースだろう。
時計工場を営む男性は、難民危機や英国の欧州連合(EU)離脱の可能性といった欧州情勢の不確かさが、欧州で消費マインドを一段と弱らせ、中国の工場にも影響を及ぼしかねないと語る。
「一定数の工場は規模を縮小したり、移転したりといった何らかの変化を経験することになるだろう」と、この男性は指摘。「市場動向に従うしかない。年央までに十分な受注がなければ、人員を削減しなければならないだろう。だが当面は、今の労働力を維持したい」
<淘汰>
珠江デルタで求人の簡易ブースや看板がほとんど当たり前な光景であることに変わりないが、向こう数カ月で労働市場はさらに引き締まるとみられている。
「企業の淘汰(とうた)が予想される」と、東莞市トップの徐建華・中国共産党東莞市委員会書記は最近の記者会見で語った。
徐氏は、同市では昨年に外資系約500社を含む3万9000社が倒産したとする一方、同時期にそれを上回る数の新たな会社が登録されたと強調。向こう1年は「経済的な課題がますます複雑化する」と、徐氏は指付け加えた。
一方、中国で米アップルの受託生産を行う台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業<2317.TW>の子会社Foxlinkのような安定した収入源を持つ一部の大規模な工場では、見通しは明るいように見える。
同子会社の採用担当者は、多くの工業区が行き詰まっているとしたうえで、「われわれの会社は新たな労働者を必要としている。今でも多くの受注がある」と語る。