介入主義に走るフランスの強気
かつて弱腰だと嘲りの言葉を浴びた国がオランド大統領の下で積極的軍事介入に転じている
警察役 フランスがマリに送り込んだ精鋭部隊の兵士たち(今年7月) Joe Penney-Reuters
自由と民主主義、自国らしさを守るためなら武力行使を最もいとわない指導者は誰か。ヒントを出すと、彼は筋金入りの社会主義者で、アメリカ人に「チーズを食べながら降伏する猿」と軽蔑された国を率いている。
答えはフランスのフランソワ・オランド大統領。彼の下、フランスは国連安保理の5つの常任理事国の中で一番の介入主義国となった。オランドの国内での人気はいまひとつだが、国外では精力的に活動している。
オランドはフランスの元植民地だけでなく、他の地域にも積極的に軍事介入を行っている。アフリカ北部や中東地域への新たな介入主義は、外国での戦争から手を引きたがっているアメリカとは対照的だ。
その背景には、10年12月に始まった「アラブの春」がフランスにとってアメリカより「はるかに身近な出来事」だったことが挙げられると、ジェラール・アロー仏国連大使は言う。地理的に近いだけでなく、フランスにはアフリカ北部からのアラブ系移民が大勢いる。「わが国は常にアメリカに介入を頼って来たが、もうそれはできない」と、アローは言う。
11年には当時のニコラ・サルコジ大統領やイギリス政府が、バラク・オバマ米大統領にリビア介入を迫った。NATO(北大西洋条約機構)主導の空爆作戦ではフランス軍パイロットが中心となり、最高指導者ムアマル・カダフィと戦う反体制派を勝利に導いた。その後のリビア騒乱が、大規模な軍事介入についてオバマ政権を慎重姿勢に転じさせたが、フランスは違った。
8月にシリアが化学兵器を使用したとき、オバマは軍事介入の構えを見せ、議会に承認を求めようとしたが承認は得られそうになかった。イギリスでもデービッド・キャメロン首相が、軍事行動について議会の承認を得られなかった。
議会などほとんど無視
しかしオランドは違った。経済成長の鈍化や失業率の高さから支持率は20%前後にとどまり、有権者の3分の2以上がシリアへの軍事介入に反対を表明するなか、オランドはアメリカ主導のシリア空爆に、議会の助言や同意を得ることもなしに要員を送ると表明した。
結局オバマは態度を翻し、オランドは激怒した。先週には、米国家安全保障局(NSA)がフランス政府関係者などの電話盗聴を行っていたことが発覚し、米仏関係はさらに冷え込んだ。
フランスはシリアに対して、アメリカの支援なしに軍事介入を行う準備ができていない。だが、その他の地域では積極的に軍事介入を行うつもりだ。