米ジャーナリストはなぜ沈黙するのか
報道関係者のジレンマ
では、なぜアメリカのジャーナリストたちは、あまり積極的にアサンジを擁護しないのか。大きな理由は3つある。
第1に、客観報道と党派的中立性を極めて重んじるアメリカのジャーナリストたちは、特定の主義主張に肩入れすることを嫌う。多くの主要メディアが請願文や声明文への署名を禁止しているし、自発的にそういう自己規制をしているジャーナリストも多い。
オバマ政権宛ての書簡を起草した1人であるコロンビア大学のシャピロによれば、書簡を同僚教授たちに回覧すると「ジャーナリストでもある以上、請願文に署名しないことにしている」という理由で署名を断った人物が何人かいたという。
第2に、客観報道を重視する立場からアサンジの行動の動機に疑念を抱くジャーナリストも多い。今回の一件でアサンジを擁護すれば、ジャーナリストが客観性を放棄するという不適切な行為を容認するに等しいと、主流メディアの記者や編集者、プロデューサーたちは考えているのかもしれない。
第3に、アサンジを訴追すべきでないと思っていても、ウィキリークスの手法に嫌悪感を抱いていて、公の場でアサンジを擁護することに消極的なジャーナリストもいる。
その1人がコロンビア大学ジャーナリズム大学院のサム・フリードマン教授だ。フリードマンは、同僚たちの起草したオバマ政権宛ての書簡に署名しなかった。「人命が脅かされる恐れがあることを顧みずに、政府の秘密情報を大量に暴露した(ウィキリークスの)軽率な行為を十分に批判していないように思えた」と、フリードマンは言う。
「(ジャーナリストたちは)アサンジの行動を(報道の自由の)範囲内と考えているが、アサンジの行動には賛成しかねると思っている」と、NBCテレビのコメンテーター、ダン・エイブラムズは言う。「この深刻なジレンマがウィキリークス問題に対するメディアの報道姿勢、とりわけ(アサンジ訴追の動きに対する)煮え切らない態度に表れている」
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■「窮地のアサンジ『性的暴行』の中身」
[2011年1月19日号掲載]