野生の楽園を守るため立ち上がった、マサイ出身8人の女性レンジャー
Meet Team Lioness
IFAWが正規契約で採用したマサイ族の8人の女性たちは命の危険と背中合わせのレンジャーの仕事に誇りを持っている WILL SWANSON/INTERNATIONAL FUND FOR ANIMAL WELFARE
<コロナ禍で懸念される密猟者の増加にマサイ族の女性レンジャーが待ったをかける>
ケニア当局は昨年、野生動物の密猟が90%減ったと発表した。だがその後、コロナ禍が発生。職を失った人々が警備の手薄になった国立公園に侵入し、違法の狩猟に手を染める事態が懸念されている。
そうしたなか、感染のリスクをものともせず、密猟対策に立ち上がった女性たちがいる。マサイ族の村から集まった8人のレンジャーから成るチーム・ライオネスだ。
彼女たちには正規雇用の勤務条件が提示された。仕事場はタンザニアとの国境地帯、キリマンジャロの麓に広がる面積392平方キロのアンボセリ国立公園。ただし、コロナ禍が収まるまでよほどの例外を除き家族とは会えない。パトロールに出ていないときもべースキャンプにとどまり、デスクワークをする。
ケニア当局は、今のところ密猟は増えていないとしている。しかし動物保護団体は、コロナ禍による国立公園の閉鎖が野生動物に及ぼす悪影響を危惧している。
「(観光収入が)途絶えると保護活動の継続が困難になり、野生動物の安全が脅かされ、生息地が失われかねない」と、国際動物福祉基金(IFAW)は最近発表した報告書で警告している。この報告書によれば、東アフリカの動物保護地域では土地のリースや地域の雇用、そして多くの人々の生活が観光収入に支えられている。
しかも本来なら、今は多くの集客が見込める観光シーズンだ。世界自然保護基金(WWF)のナンシー・ギセイガによると、ケニアの観光産業の就労者は120万人以上で、多くは密猟対策や人間と野生動物のトラブル対応など国立公園での警備の仕事に従事している。だが、彼らは公園の閉鎖で一時帰休となった。
IFAWの東アフリカ地域ディレクター、ジェームズ・イシチェによると、ケニア動物保護局も地域の保護当局も、レンジャーの人件費を観光収入に大きく依存している。報道によれば、ケニア政府が感染拡大封じ込めのため3月に入国制限に踏み切ると、観光収入は98・9%も落ち込んだ。
この状況では、保護当局は何らかの補助金を得ない限り密猟対策を行えないと、イシチェは言う。
丸腰で危険と向き合う
そこでIFAWは、レンジャーを雇って国立公園のパトロールを継続することにした。アンボセリもその1つ。この広大な公園にはゾウ、サイ、スイギュウ、キリン、ガゼルなど多様な野生動物が生息するが、それらの動物は毛皮や角が闇市場で高値で売れるため密猟者に狙われる。IFAWが雇ったチーム・ライオネスは密猟防止に大活躍していると、イシチェは言う。