野生の楽園を守るため立ち上がった、マサイ出身8人の女性レンジャー
Meet Team Lioness
コロナ禍で自分たちの仕事は今まで以上に重要になったと、チームの一員であるロイセ・ソイラは話す。「アンボセリ周辺の住民は大半が保護機関に非正規で雇われている。新型コロナウイルスのせいで失業した人が多く、つい密猟で稼ごうとしてしまう」
ソイラはケニア政府が自分の仕事を「人々の生活に不可欠な職種」と認めたことを誇らしく思っている。「野生動物に関わる仕事をするのは学生時代からの夢。チーム・ライオネスに入って、その夢がかなった。新型コロナのような大変なことがあっても、この仕事を続けていきたい」
とはいえ、地元に帰れないためにもともと困難な仕事がさらにやりにくくなっていると、IFAWの広報担当ジャクリーン・ヌヤガは言う。レンジャーは地元住民から密猟情報を入手しているからだ。電波が届きづらい環境で働くことが多いので、携帯電話でもなかなか連絡が取れない。
長い間家に帰れないことの心理的ストレスも大きいと、チーム・ライオネスの一員であるユーニス・ぺネティは話す。「家族や大切な人たちに会いたいのに会えない。人間関係にもしわ寄せがいく」
それでなくてもパトロールは、若い女性には過酷な仕事だ。猛暑や洪水のさなかでも動物たちを追わなければならないと、1児の母親でもある28歳のぺネティは言う。彼女たちは銃などの護身用の武器も所持しておらず、危険な場所に丸腰で行かねばならない。
「動物は人間を襲い、殺すこともある。でも私はこの仕事に誇りを持っている。男性にできることは女性にもできることを証明し、周囲に一目置かれるようにもなった」と、ぺネティは胸を張る。
イシチェによれば、IFAWはケニア政府とWHO(世界保健機関)の指針に従い、レンジャーに感染防止のためのPPE(個人用防護具)を支給している。女性のレンジャーを採用したのは、ジェンダー間の平等を推進するためだけではない。「女性は時には男性以上に自然と向き合っている」と、イシチェは話す。
「水くみや薪集め、家畜の世話など日々の労働を通じて、環境と調和する生活習慣を身に付けている」
経済の悪化が予測されるなか、IFAWは野生動物を守るため監視を続けていく考えだ。イシチェもチーム・ライオネスの活躍が続くことを望んでいる。
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[2020年8月25日号掲載]