最新記事

ケニア

野生の楽園を守るため立ち上がった、マサイ出身8人の女性レンジャー

Meet Team Lioness

2020年08月21日(金)16時45分
デービッド・ヌジャギ

コロナ禍で自分たちの仕事は今まで以上に重要になったと、チームの一員であるロイセ・ソイラは話す。「アンボセリ周辺の住民は大半が保護機関に非正規で雇われている。新型コロナウイルスのせいで失業した人が多く、つい密猟で稼ごうとしてしまう」

ソイラはケニア政府が自分の仕事を「人々の生活に不可欠な職種」と認めたことを誇らしく思っている。「野生動物に関わる仕事をするのは学生時代からの夢。チーム・ライオネスに入って、その夢がかなった。新型コロナのような大変なことがあっても、この仕事を続けていきたい」

とはいえ、地元に帰れないためにもともと困難な仕事がさらにやりにくくなっていると、IFAWの広報担当ジャクリーン・ヌヤガは言う。レンジャーは地元住民から密猟情報を入手しているからだ。電波が届きづらい環境で働くことが多いので、携帯電話でもなかなか連絡が取れない。

長い間家に帰れないことの心理的ストレスも大きいと、チーム・ライオネスの一員であるユーニス・ぺネティは話す。「家族や大切な人たちに会いたいのに会えない。人間関係にもしわ寄せがいく」

NW_CRN_03.jpg

PAOLO TORCHIO/INTERNATIONAL FUND FOR ANIMAL WELFARE

それでなくてもパトロールは、若い女性には過酷な仕事だ。猛暑や洪水のさなかでも動物たちを追わなければならないと、1児の母親でもある28歳のぺネティは言う。彼女たちは銃などの護身用の武器も所持しておらず、危険な場所に丸腰で行かねばならない。

「動物は人間を襲い、殺すこともある。でも私はこの仕事に誇りを持っている。男性にできることは女性にもできることを証明し、周囲に一目置かれるようにもなった」と、ぺネティは胸を張る。

イシチェによれば、IFAWはケニア政府とWHO(世界保健機関)の指針に従い、レンジャーに感染防止のためのPPE(個人用防護具)を支給している。女性のレンジャーを採用したのは、ジェンダー間の平等を推進するためだけではない。「女性は時には男性以上に自然と向き合っている」と、イシチェは話す。

「水くみや薪集め、家畜の世話など日々の労働を通じて、環境と調和する生活習慣を身に付けている」

経済の悪化が予測されるなか、IFAWは野生動物を守るため監視を続けていく考えだ。イシチェもチーム・ライオネスの活躍が続くことを望んでいる。


20200825issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。

[2020年8月25日号掲載]

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず

ビジネス

米債務持続性、金融安定への最大リスク インフレ懸念

ビジネス

米国株式市場=続伸、堅調な経済指標受け ギャップが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米景気好調で ビットコイン
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 5

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 4

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること