最新記事

アメリカ

瀕死の郵政事業を救う7つの方法

経営難にあえぐ米郵政公社に大胆な改革案を提案しよう

2009年10月6日(火)17時08分
ダニエル・ストーン

変革のとき 赤字を垂れ流す米郵政公社の非効率なサービスに批判が高まっている Courtesy USPS

 アメリカの郵政公社では、19世紀後半から非公式なスローガンが受け継がれている(公式なものは存在しない)。「雨が降ろうと雪が降ろうと、必ず配達します」だ。

 もっとも、そこには経済危機や赤字への対応策は書かれていない。郵政公社は政府の援助を受けているが、今年は70億ドル近い損失を計上する見込み。米政府監査院(GAO)は、メディケア(高齢者医療保険制度)や2010年国勢調査とともに郵政公社を「ハイリスク」な連邦プログラムに認定した。

 バラク・オバマ米大統領もこの夏、フェデックスやユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)といった競合の民間企業に比べて郵政公社の状況は悲惨だと語り、悲観的な見方に追い討ちをかけた。

 窮地に追い込まれた郵政公社の幹部たちは「犯人」を糾弾している。電子メールだ。

 メールが普及し、文書や写真をオンラインでやり取りできるようになった結果、今年の郵便取り扱い件数は年間総数の10分の1以上に当たる227万件も減少する見込みだ。

 ただし、郵政公社は明確な解決案も提示している。同社への批判を強めている米議会に対し、700カ所の郵便局を閉鎖すると宣言し、郵便料金の値上げもほのめかした。

 だが通信の高速化が進むなか、本当にこれが最善の戦略なのだろうか。郵便局で長い列に並ばされた経験がある人なら誰でも、サービスに改善の余地があることはわかっている。

 ニューズウィークは経営コンサルタントやフューチャリスト(専門領域にとらわれない広い視点でビジョンを提示する人)に取材し、古臭い郵政公社をカネを稼げる21世紀型のスマートな組織(少なくとも赤字を出さない組織)に変貌させるコツを聞いた。

(1)ネットビジネスに参入せよ
 メールを使う人が増えているのだから、彼らのニーズに合わせるべきだ。「子供が生まれたらすぐ、全員にメールアドレスを配ろう」と、フューチャリストのワッツ・ワッカーは言う。もちろん、彼らはいずれほかのメールアドレスを取得するだろうが、郵政公社への親しみの気持ちは残る。しかも、配布アドレスを使った広告配信は見入りのいい収入源になる。

(2)サービスの向上を
 郵政公社は配達日を週6日から5日に減らすと提案しているが、逆に週7日に増やすべきだと、ノースウェスタン大学経営大学院のリチャード・ダヴェンニ教授は言う。

 赤字の際にサービスを拡充するという提案は不思議に聞こえるかもしれないが、人々が郵政を信頼しないのはいつ届くか当てにできないから。営業時間を短縮してでも、毎日確実に配達することにこだわるべきだ。

(3)クーポンでお得感を演出
 古臭い手法に聞こえるが、インターネットに群がる人々を呼び戻すにはインセンティブが必要だ。「アメリカはクーポン社会だ」と、ビジネスコンサルタントのマーリーン・ブラウンは言う。「人々にお得感を感じさせる必要がある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中