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進化生物学

セックスでも子育てでも「メスの優位」こそが社会的調和の要因...サルから学ぶ「男女平等のメリット」

ANIMAL INSTINCTS

2025年2月27日(木)15時20分
ネイサン・レンツ(ニューヨーク市立大学教授・進化生物学)

親子でなくても一緒に子育て

バーバリーマカクの親子

バーバリーマカクは数十頭の母系の群れを作り、集団が共同で子育てをする IMAGES FROM BARBANNA/GETTY IMAGES

さて、性生活でドウイロティティの対極に位置する霊長類は、バーバリーマカクだ。こちらも社会的な絆は強いが、性的には実に奔放だ。

このサルには特別な点がいくつもある。現存するオナガザル科マカク属では最古の種で、アジア以外に生息している唯一のマカク属だ。人類以外にアフリカ大陸からヨーロッパに「進出」できた唯一の霊長類でもある。


何百年か前にモロッコからの船に便乗してジブラルタルに上陸し、そのまますみ着いたらしい。

バーバリーマカクの子育ては、親子関係の有無に関係なく1つの群れが共同で子供の世話をするシステムで、霊長類の中では珍しい。

オスもメスも、群れにいる全ての子の育児に参加する。オスは乳飲み子を抱きかかえ、毛づくろいをしたり、遊んだりする。乳離れした後の子の食事を手伝うのもオスの役目だ。

バーバリーマカクの群れは母系制で、上位のメスとの性的関係によって優位性が決まる。オスはある種の友情による集団を形成しており、一匹のオスが他のオスに乳飲み子を渡して世話をさせたりして社会的な関係を築いているようだ。

発情期に性交の頻度が高まるのは当然として、メスは1年を通じて異性とも同性ともセックスを楽しむ。非常に性欲の強い種であり、オスもバイセクシュアルで相手を選ばないが、異性間の性的アクセス(交尾相手の選択)はメスが主導する。

つまり、メスはたいてい、群れの中で社会的地位の高いオスを選ぶ。

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