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進化生物学

セックスでも子育てでも「メスの優位」こそが社会的調和の要因...サルから学ぶ「男女平等のメリット」

ANIMAL INSTINCTS

2025年2月27日(木)15時20分
ネイサン・レンツ(ニューヨーク市立大学教授・進化生物学)

実際、ドウイロティティは大人になると、オスもメスも生まれた場所を本能的に離れる。この「出生分散」が性別を問わず見られ、かつ個体数が十分に多いからこそ、遺伝的に健全な子孫を産めるのだろう。

オスとメスが対等で、同じように行動する。これが性的モノガミーの維持には欠かせないようだ。性的モノガミーを実践する哺乳類8種のうち3種は霊長類だが、そのいずれも外見ではオスとメスの区別がほとんどつかず、行動も似ている。そして子育ても平等に分担している。


これは一般的なことではない。ほとんどの霊長類ではオスとメスの外見に差があり、体格も違う。例えばゴリラのオスのサイズは、メスのほぼ2倍ある。行動もたいていは性別によって異なる。これには妊娠期間や母乳を与える必要性、子が自立するまでにかかる時間の長さなどが関係している。

それなのに、外見的特徴がほぼ同じ3種の霊長類だけは性的モノガミーを維持している。これは決して偶然ではないだろう。

もちろん、見た目でオスとメスの区別がつかなくても性的モノガミーではない霊長類はたくさんいる。つまり、見た目の類似性は性的モノガミーの十分条件ではない。しかし必要条件の1つではありそうだ。実際、モノガミーが両性の関係の平等化を促すことは知られている。

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