最新記事
生成AI

野心的で、狡猾で、マキャベリスト的? オープンAI「お家騒動」で垣間見えたサム・アルトマンの本性...「効果的利他主義」の顔は見えず

AN AWKWARD RETURN

2023年11月29日(水)18時00分
ニティシュ・パーワ(スレート誌テクノロジー担当)
どんでん返しの追放劇でアルトマンの野心と社内政治力も注目されている JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

どんでん返しの追放劇でアルトマンの野心と社内政治力も注目されている JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

<あのチャットGPTを開発したシリコンバレー企業内部の権力闘争が浮き彫りにした、最先端技術のイデオロギー対立>

ちょうど1年前に対話型AI(人工知能)のチャットGPTを発表して、世界をあっと言わせた米スタートアップのオープンAIが、今度は組織内の権力闘争で世界を驚かせた。

オープンAIを監督する非営利団体の理事会(取締役会に相当)が突然、サム・アルトマンCEOを解任すると発表したのは、11月17日のこと。それに抗議するように共同創業者のグレッグ・ブロックマン社長が退社を表明。ピンチヒッターとしてミラ・ムラティCTO(最高技術責任者)の暫定CEO昇格が発表されたが、2日後にゲーム実況配信ツイッチの共同創業者エメット・シアが「正式な暫定CEO」に就任。オープンAIの最大の投資家であるマイクロソフトがアルトマンらの受け入れを提案する一方で、社員の約9割がアルトマンの復帰を要求──。

そんなすったもんだが、ほぼ振り出しに戻る形で収束しつつある。

21日夜、アルトマンのCEO復帰が発表された。ムラティはCTOに戻り、アルトマンとブロックマンに忠誠を誓って辞表を提出した研究者たちもオープンAIに復帰したか、復帰を申し入れている。これにより「チーム・アルトマン」は、再びマイクロソフトの手厚い支援を得ながら、オープンAIを運営していくことになりそうだ。

ただ、「ほぼ」振り出しに戻ったと言ったのは、アルトマンがオープンAIの経営権を握る非営利団体の理事には復帰しないからだ。ブロックマンも社長には復帰するが、理事には復帰しない。

それでも今回の騒動の主人公(と忠臣たち)のほとんどは、この結果に満足しているようだ。「オープンAIに戻り、マイクロソフトとの強力な関係をますます強化することを楽しみにしている」と、アルトマンはX(旧ツイッター)に投稿した。

ブロックマンも「戻ってきたぞ」と、満面に笑みをたたえた自撮り写真をXに投稿した。IT業界情報サイト「インフォメーション」のエリン・ウー記者によると、ブロックマンはオープンAI本社の火災報知器を鳴らして復帰を祝ったとされる。

超短期間だがオープンAIのCEOを務めたシアも、「この解決策に関われてうれしい」と述べた。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、「(オープンAIとの)協力関係を強化して、次世代AIの価値を顧客やパートナーにもたらすことを楽しみにしている」と表明した。

だが、インフォメーションのアミール・エフラティ編集主幹が指摘するように、「全てがバラ色というわけではない」。

試写会
『ガール・ウィズ・ニードル』のトークイベント付き試写会に5組10名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国、石油・ガス鉱区リースで環境分析不要に 数千件

ビジネス

ダイキンや日立など、電気機器廃棄物規則巡りモディ印

ビジネス

日経平均は急反落、一時2000円近く下落 米中摩擦

ビジネス

イオン、26年2月期は13%営業増益見込む 市場予
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が見せた「全力のよろこび」に反響
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 10
    右にも左にもロシア機...米ステルス戦闘機コックピッ…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 9
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 10
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中