最新記事
SDGs

「自分にできることを...」JICA職員・林 研吾さんが蟹江研究室で培ったSDGsの視点

2025年3月4日(火)13時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

──SDGsの課題は?

日本が国際協調について話し合う際、どうしても国内経済や日本内部の課題への関心が強く、「そんなことをしている場合か」という意見が出やすい現状があると思います。このような考え方にも一理あるとは思いますが、一方で、なぜ国際協調が必要なのか、なぜSDGs達成に向けて行動しなければならないのかを知る機会を作り、私たちがその意義をしっかり伝えることが重要だと感じています。

現在、日本の教育指導要領にもSDGsの文言が取り入れられ、学校内でSDGsをテーマにした授業が行われるようになっています。ただ、現場では課題も多く、以前、私がJICA中部センターで学校の先生方と一緒に仕事をしていた際、「自分がSDGsを理解できていないので子どもにどう伝えたらいいのかわからない」「教材をどう作ればいいのかわからない」といった声を多く耳にしました。上からSDGsが大事だと指針を示されたとしても、教育現場では、まず教える側がしっかり理解し、その後でどのように次世代に伝え、アクションを起こさせるかを具体的に考えなければ、成果にはつながらないと感じました。

また、気候変動のニュースなどで未来に危機感を持つ人はいるとは思いますが、実感が湧きにくい部分も多いかと思います。その重要性をいかにわかりやすく伝え、考えるきっかけを提供するかがSDGs達成に向けては大きな課題と考えております。SDGs達成への具体的な行動につなげていくために、多くの方々にSDGsや世界の現状を知っていただき、それらについて考えていただけるように発信していくことが私たちに求められている役割だと思っています。

──SDGsを学ぶ若者たちに向けてアドバイスを。

将来「これをやりたい」と思った時に、組織に属するか、自分で何かを始めるか、人それぞれ選択肢があると思います。ただ、何かを実現しようとするとき、必ずと言っていいほど制約が出てくるものです。その中でも、破ってはいけないルールは守るべきですが、一方で、その制約を理由に諦めるのではなく、「どうすればそれを乗り越えられるのか」を考え、行動してほしいと思います。

SDGsを学んでいる多くの方が、持続可能な社会の実現という同じビジョンを描いていると思いますが、その過程で壁にぶつかることは避けられません。しかし、そこで立ち止まらず、同じ志を持つ仲間と繋がることで、新しい道を見つけられるはずです。

私自身も、やりたいことをどう実現するか、日々試行錯誤しながら取り組んでいます。皆さんと一緒に挑戦し、SDGsを通じて持続可能な社会の実現に向けて前進していけたらと思っています。

20250311issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年3月11日号(3月4日発売)は「進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗」特集。ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニスト、29歳の「軌跡」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

カナダの銀行の米進出「フェアでない」、トランプ氏が

ビジネス

カナダ、米製品に報復関税発動 首相「戦いから退かず

ワールド

中国、米関税巡りWTOに異議申し立て 先月に続き2

ワールド

ゼレンスキー氏「事態正す時」、平和構築へトランプ氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政権の対カナダ25%関税
  • 3
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Diaries』論争に欠けている「本当の問題」
  • 4
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    バンス副大統領の『ヒルビリー・エレジー』が禁書に…
  • 7
    米大統領執務室での「公開口論」で、ゼレンスキーは…
  • 8
    「70年代の日本」を彷彿...発展を謳歌する「これから…
  • 9
    米ウクライナ首脳会談「決裂」...米国内の反応 「ト…
  • 10
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 5
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 8
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 9
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中