最新記事
SDGs

温暖化対策の強力な切り札は海水からCO2を回収 日本にも最適のテクノロジー「DOC」とは

2024年3月12日(火)20時00分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)
ダイレクト・オーシャン・キャプチャーの装置をメンテナンスする人

年間100トンのCO2を回収するというダイレクト・オーシャン・キャプチャーの2号機(キャプチュラ社提供)

<地球沸騰時代とも呼ばれる危機的な温暖化への切り札として注目を集める新技術とは>

近年、温暖化対策の切り札としてよく耳にするようになったダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)は、大気中のCO2を回収する技術だ。その海洋版の研究も進んでおり、アメリカで実証実験が行われている。海水に溶け込んでいるCO2を直接回収するこの方法、ダイレクト・オーシャン・キャプチャー(DOC)もDAC同様、基本的にどこにでも設置できる。

海水もCO2を吸収する

陸の植物に吸収されるCO2をグリーンカーボンといい、藻などの海の植物やプランクトンといった海の生態系に吸収されるCO2はブルーカーボンと呼ばれる。地球の表面積の約7割を占める海洋は陸上よりCO2吸収量が多く貯蓄期間が長いため、最近、日本でも「ブルーカーボンは注目の温暖化対策だ」とよく話題に上がっている。

海の植物などがCO2を吸収するのは、当然ながら海水中にCO2があるため。海水は大気中のCO2を吸収しており、海面のCO2濃度が低くなれば大気中のCO2が吸収されやすくなる(海洋研究開発機構の研究報告より)。

この性質を利用したのがダイレクト・オーシャン・キャプチャーだ。海水からCO2を直接回収してCO2を含まない海水を海へ戻せば、海水は大気からまたCO2を吸収する。2021年にカリフォルニア工科大学で設立された「キャプチュラ」社は、この循環システムを実現させた。

ロサンゼルス港で、年間100トンのCO2を回収中

キャプチュラは「わが社のシステムに必要なのは、海水と再生可能エネルギーの2つのみです」と説明する。海水をシステムに取り込み、電気透析技術を利用して海水に溶けた炭素をCO2の形に変換する。このCO2を膜と真空管で回収した後で海水を海へ戻す。添加物不要で、海水には化学物質は残らない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

19日の米・イラン核協議、開催地がローマに変更 イ

ビジネス

米3月の製造業生産0.3%上昇、伸び鈍化 関税措置

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き 米関税で深刻な景気後退の

ワールド

ルビオ米国務長官、訪仏へ ウクライナや中東巡り17
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 9
    あまりの近さにネット唖然...ハイイログマを「超至近…
  • 10
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 10
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中