温暖化対策の強力な切り札は海水からCO2を回収 日本にも最適のテクノロジー「DOC」とは
同社の実験は順調に進んでいる。2022年夏に、年間1トンのCO2を回収する1号機が完成し、昨秋は、年間100トンのCO2を回収する2号機の稼働が始まった。2つともロサンゼルスに設置してある。1号機は2000時間以上の海水テストを完了しており、CO2 回収率は90%以上とのことだ(2023年10月の同社のレポートより)。
今夏にはカナダのケベック州に100トン回収規模のシステムを設置する。モントリオールのDAC企業とパートナーを組み、カナダをCO2除去の世界有数の拠点にしようと目指す。また今秋ノルウェーに設置するシステムはさらに規模が大きく、年間1000トンを回収できるという。
今後も実証実験を重ね、システムの効率化を図り、2026年までには最初の商業施設をスタートさせる見込み。キャプチュラのプロジェクトは、投資家たちから多額の資金を調達している。
回収したCO2を海底に貯蔵
抽出したCO2は、水素と合成することで化石燃料に代わる持続可能な燃料に使ったり、低炭素のプラスチックや建築材料に変えることが可能だ。キャプチュラでは、ノルウェーの新システムで回収するCO2を海底に永久保存する計画を発表している。その場所は北海の海底だ。
ここはキャプチュラが独自に確保した場所ではない。ノルウェーのノーザン・ライツ社が、DACなどで回収したCO2の貯留地として提供している。顧客が回収したCO2は液化した状態で、船でノーザン・ライツのCO2受け入れターミナルまで運ばれ、そこから北海の海底2600mの深さに貯留される。今年から始動し、年間のCO2貯留量は最大150万トンだという。キャプチュラが回収したCO2もこの手順で貯留されることになる。
日本でも、ダイレクト・オーシャン・キャプチャーの開発
最近、日本でも洋上風力発電を電源としたダイレクト・オーシャン・キャプチャーシステムが海洋研究開発機構により開発された。
海洋の二酸化炭素吸収に関しては、海洋のアルカリ性が弱まる海洋酸性化の問題が懸念されている。ダイレクト・オーシャン・キャプチャーも、これから世界で求められるのではないか。筆者はこの分野の専門家ではないが、DACは通常広い敷地が必要とされることを考えると、国土の狭い日本でのCO2回収は海でのDOCの方が導入しやすいだろうと思う。
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com
2024年12月10日号(12月3日発売)は「サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦」特集。地域から地球を救う11のチャレンジとJO1のメンバーが語る「環境のためにできること」
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