老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌の育て方【最新研究】
CagAはピロリ菌以外の菌では見つかっていない特殊なタンパク質で、胃粘膜表面に接着したピロリ菌がこのタンパク質を粘膜上皮細胞に注入することで、炎症や細胞のがん化が生じます。
日本の中でも沖縄以外の人が感染しているのはほとんどがこのタンパク質をつくる菌株ですが、沖縄の人の胃の中にいるのは、欧米でよく見られるCagAを持たない毒性が低い菌株です。実際、沖縄では胃がんの発生率は低いのです。
腸内細菌が出産時に母親から子どもへと代々引き継がれていくことを考えると、ピロリ菌のタイプが欧米型で、かつアッカーマンシア菌を持っているということは、沖縄の人の腸内細菌のルーツはどこかで欧米の腸内細菌タイプのルーツと重なっているのかもしれません。
長寿の腸内細菌には食事が重要? 注目が集まる「地中海食」
では、長寿につながる腸内細菌叢をつくる食事というのはどういうものなのでしょう。
腸内細菌と食事に関する研究は、日本より欧米のほうが進んでいます。長寿や健康、腸内細菌にいい食事というエビデンスが最も多いのは「地中海食」です。
地中海食とは、トマトやオリーブオイル、魚介類などを多く食べる地中海沿岸地域の伝統的な食事のことで、ヨーロッパの研究グループによって、これまでに肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の予防・改善や、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の予防に有用ということが明らかになっています。
すでに地中海食の介入試験により、加齢による心身の衰えである「フレイル」が予防可能であり、そのメカニズムに炎症抑制と腸内細菌叢の変化が関わることも明らかにされています[*]
その試験では、欧州5カ国で612人の高齢者(65〜79歳)を対象に、12カ月間の食事介入試験が実施されています。
対象者の半数を地中海食、残りの半数には通常の食事を継続してもらい、試験開始前と終了後の腸内細菌叢の変化およびフレイルの程度が評価されました。その結果、地中海食の継続と特定の微生物叢の変化の関連が確認されたそうです。
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