イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レディパーツ!』が描く新しいムスリム女性像
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それぞれ強烈な個性の立った「レディパーツ」のメンバー。実際にキャストが楽器を演奏し、日頃抱いている思いを代弁、音楽に込めてぶつける 『絶叫パンクス レディパーツ!シーズン2』© WTTV Ltd 2024.
<ロンドンを舞台に、ムスリム女性たちのパンクバンド「レディパーツ」が繰り広げる青春音楽コメディ『絶叫パンクス レディパーツ!』のシーズン2が配信開始。イスラム文化を専門とする研究者が、ドラマの見どころと誕生の背景を解説>
イギリスの人気ドラマ『絶叫パンクス レディパーツ!』のシーズン2の配信が始まった。舞台はロンドン。「レディパーツ(女の秘部)」という挑発的なグループ名の女子パンクバンドの物語である。
ロンドンといえばパンク、パンクといえば刺激的というのは、ある程度想定内かもしれない。おそらく多くの読者にとって想定外なのは、バンドのメンバー全員がムスリム(イスラム教徒)であり、彼女たちが音楽と絶叫、セリフを通して、社会のひずみに切り込んでいく、異色のコメディ・ドラマだという点だろう。
3年前に制作されたシーズン1でも、今回始まったシーズン2でも、レディパーツが「自分たちらしいパンクバンド」として成長していく様子が描かれている。
主な登場人物を紹介しよう。
ギター担当のアミーナは、大学で微生物の研究をしながら婚活に励んでいる。シーズン1の冒頭では、アミーナがギタリストとしてバンドに加わるまでのいきさつが語られる。もともとギターが得意だが、お見合い相手の一人に「音楽は宗教的禁忌(ハラーム)」と反対され、友人にも「音楽への情熱を男に見せちゃダメ」と釘を刺されていた。
ところが、イケ面大学院生のアッサン(ドラム担当のアイーシャの弟)を「エサ」にした捕獲作戦によって、アミーナはまんまとバンドメンバーに引き込まれてしまう。
サイラは、アミーナの才能に目を付けバンドに勧誘した。彼氏の扱い方や家族との付き合い方は不器用だ。
アイーシャはクールで激しく、Uber(配車サービス)のドライバーをするときも客におもねることはない。
ビズマはバンドで唯一の既婚者で平和主義者。よき妻、よき母の顔をもつが、スプラッター系のイラストレーターでもある。
モンタズは、目の周辺以外、頭のてっぺんから手足まで覆っていて、バンドメンバーにも素顔を見せていない。シーズン1ではランジェリーショップの店員だったが、シーズン2ではバンドのマネージメントをするために「モンタズ・レコード」を立ち上げるやり手でもある。