焦点:米関税「見直し」求め閣僚協議へ、先陣切る日本 長期戦も視野

4月16日、 赤沢亮正経済再生担当相が訪米し、世界に先駆けて米関税措置の見直しに向けた交渉に臨む。写真は2024年4月、ホワイトハウス周辺に掲げられた米国と日本の旗(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)
Kentaro Sugiyama Takaya Yamaguchi
[東京 16日 ロイター] - 赤沢亮正経済再生担当相が訪米し、世界に先駆けて米関税措置の見直しに向けた交渉に臨む。米側が問題視する非関税障壁の見直しでは、交渉カードの乱発を避けたい考えを崩しておらず、結論を得るまでの曲折も予想される。日米首脳間での妥結に向け、7月の参院選をまたぐ長期戦となる可能性がある。
<非関税障壁巡り「備え」>
「準備ができた。何が一番国益に資するのか、何が一番効果的かということを考え抜き、しっかり国益を守る」。訪米に先立ち、赤沢再生相は報道陣に語った。
日本時間17日にベッセント米財務長官、米通商代表部(USTR)のグリア代表と会談、初めての関税交渉に臨む。
初回会合では、これまでの米経済への貢献を改めて説明するのと併せ、「非関税障壁を柱とする米国の問題意識を共有し、要求があるなら明確にする」という狙いがあると、複数の交渉関係者は口をそろえる。
非関税障壁の見直しを巡り、農産品の市場開放や自動車規制の緩和、消費税の還付も含め、「テーブルに乗せられそうな課題への備えは準備した」と政府関係者の1人は語る。
<先手交渉には慎重な声>
とはいえ、今回の協議は「効果的にカードを切っていくためのスタート地点として、赤沢大臣の訪米がある」(経済官庁幹部)との位置付けで、日本が先行して交渉カードを切ることには慎重な声が多い。
「米国が何を求めてくるか、様々なケースを想定して準備を整えてきたが、相手の要求に過剰に応じるのは避けたい」と別の政府関係者は言う。
米国は相互関税を表明した直後に、時限的とはいえ措置を凍結した。政府内には「米国も混乱して苦しいし、思惑通りではない部分もあると思う。何に困っていて、日本に何ができるか探っていく必要もある」(閣僚経験者)との声が残る。
首相周辺によると、交渉妥結に向けては7月上旬がひとまずの区切りと位置付け、複数回の閣僚協議を想定している。ただ、交渉を重ねても「何をされるか分からないリスクは残る」(元経産省幹部)との指摘もあり、結論を得るまでの曲折も予想される。
<党内融和に課題も>
焦点の一つとなる農産品の市場拡大では、党内の議論を集約できるかも課題となる。農業分野に支持基盤もある自民党内では、7月の参院選を前に、安易な妥結を警戒する声もくすぶる。
赤沢再生相の訪米に先立つ15日の党部会では、農産品を巡る議論も交わされた。
「90日の期限が切れるのはまさに参院選の直前。農林水産業は現状でもかなり厳しいし、特に地方に大きな影響がある」と、出席した議員の1人はロイターに語った。「選挙前ということもあるし、地方創生の文脈にも逆行する。農産品(の市場開放)は簡単に妥協できない」と、この議員は言う。
国内総生産(GDP)へのインパクトを考慮すれば「最優先事項は自動車関税の引き下げ」(与党幹部)との声がある中、対米交渉と同時に、石破官邸が党内融和を図れるかを不安視する声は強い。
(杉山健太郎、山口貴也 編集:石田仁志)