【インタビュー】苦悶するシンガー ニック・ケイヴが「私生活の悲劇」を乗り越え、たどり着いた『Joy』
A Kinder and Gentler Nick Cave
「ソング・オブ・ザ・レイク」などアルバム収録曲のいくつかの歌詞は、信仰、精神性、霊的再生についての瞑想で貫かれている。新作のテーマは「一連の改宗」だと、ケイヴは音楽雑誌MOJOに語っているが、この点について尋ねると、「必ずしも宗教的な意味じゃないんだ」と言う。
「ある形から別の形への変化。ある方向に進み始めて、別のどこかに着くようなものだ」
この意味での「改宗」の好例が、映画的なタイトル曲とカントリー・フォーク調の「ロング・ダーク・ナイト」。「長い髪をなびかせて空を飛ぶ男」についての共通の歌詞を持つ詩的な2曲だ。
「人物か精神的な力か、何でもいいんだけど、それは信じられる誰かを探して世界中を移動する。信じられる何かではなく、自分を信じてくれる誰かを探しているんだ」
先行シングルとしてリリースされた「フロッグス」は、アルバム全体のトーンを特徴づける喜びと回復力の一例だ。この曲は聖書のカインとアベルの物語で始まり、カントリー界の大物クリス・クリストファーソンの「サンデイ・モーニン・カミン・ダウン」の歌詞に言及して終わる。
「この曲は2つの精神的荒廃に挟まれている」とケイヴは語る。「この曲のカエルは晴れやかな精神状態を体現している。僕にとってカエルはいつも、ときどき跳びはねたりする喜びにあふれた小さな生き物なんだ」