【インタビュー】苦悶するシンガー ニック・ケイヴが「私生活の悲劇」を乗り越え、たどり着いた『Joy』
A Kinder and Gentler Nick Cave
「バッド・シーズを復活させたような感覚なんだ。(音楽)活動と人生が一気に爆発したような感じ。喜びに満ちている。(新作には)『Joy』という曲がある。この言葉が実際に何を意味するのか、私にはよく分かる。見た目以上に深い言葉なんだ」
亡きメンバーへの想い
バッド・シーズ以前のグループ、バースデイ・パーティー時代の1970年代後半~80年代初頭から、ケイヴはカオス(混沌)のアーティストだった。その男が今、こんな言葉を口にする。
「あるレベルの喜びは苦しみの一種と言ってもいいと思う。われわれ人間とは何者なのかを知ることで、ある種の上昇気流に乗った爆発が起こるんだ。このアルバムはそんな感じ。とにかく爆発し続ける」
ロックと電子音楽の影響を組み合わせた『ワイルド・ゴッド』のエネルギッシュなサウンドは、内省的で余白の多い『スケルトン・ツリー』と『ゴースティーン』に対する意図的な反動ではないと、ケイヴは語る。
制作当初から望んでいたのは、バッド・シーズのメンバーをもっと前面に出したいということだった。「バンドとしての一体感を強調したいと思っていた。やっと彼らが前に出て演奏できるアルバムができた。彼らも全力でやってくれた」