最新記事

インタビュー

インド映画界には、撮影監督として引っ張りだこの日本人がいる【世界が尊敬する日本人】

2021年8月16日(月)16時40分
大橋 希(本誌記者)
中原圭子

撮影中の中原圭子 COURTESY OF KEIKO NAKAHARA

<2014年の映画『メアリー・コム』の撮影監督として一躍有名になり、さまざまな作品を撮り続ける中原圭子。ボリウッドで働くとはどういうものなのか、インタビューした>

2021081017issue_cover200.jpg
※8月10日/17日号(8月3日発売)は「世界が尊敬する日本人100」特集。CHAI、猪子寿之、吾峠呼世晴、東信、岩崎明子、ヒカル・ナカムラ、菊野昌宏、阿古智子、小澤マリア......。免疫学者からユーチューバーまで、コロナ禍に負けず輝きを放つ日本の天才・異才・奇才100人を取り上げています。

「映画監督は自分のスタイルを持っていないといけない。一方、カメラマンの私は自分の色を出すより、監督がどんな絵や色がほしいのか察して表現するのが仕事」と話すのは、インド映画界の中心地であるムンバイ(ボリウッド)で撮影監督として活躍する中原圭子。監督の意図を気遣い、それに合わせて撮影法や機材を変える細やかさが彼女の強みだろう。

子供の頃からアメリカでの映画作りを夢見ていた中原は、高校卒業後に単身渡米。サンディエゴ州立大学で映画製作を学び、2005年からロサンゼルスでカメラマンの仕事を始める。

やがて友人の紹介でインドで撮影する機会を得、米印を行き来するように。

転機となったのが、2014年のインド映画『メアリー・コム』。人気女優プリヤンカー・チョープラーがボクサーのメアリー・コム(東京五輪にも出場している)を演じたヒット作だ。ボリウッドには珍しく自然光を生かして、手持ちカメラを使った繊細かつリアルな映像が高く評価され、中原は一躍有名になった。

今ではさまざまな制作者から声のかかる中原に、インドでの映画作りなどについて話を聞いた。

――ボリウッドに入るきっかけは?

2005年に大学の映画科を卒業してロサンゼルスに引っ越しました。そこでアシスタントの仕事をしたり、インディーズ映画を撮ったりしているなかで、友達になったのがフランスから来たカメラマン。彼女は写真を撮りにインドによく行っていて、そこで出会った映画プロデューサーがインディーズ映画を作ると聞き、「いいカメラマンがいる」と私の名前を伝えてくれたんです。

そのプロデューサーから話を聞いた監督が私のウェブサイトでデモリール(過去の作品を編集してまとめたもの)を見て気に入ってくれて、撮影依頼の連絡をくれました。

インドには行ったこともないし、その人たちのことも知らないので、最初は断ろうと思ったのですが、でも一生で一度の経験になるかもしれないと考え直し、行く決断をしました。

撮影後、ロサンゼルスに戻ってきたところ、インドで友人になった別のプロデューサーからまた連絡が来て......それでインドとアメリカを行ったり来たりするように。

『メアリー・コム』予告編(英語字幕付き) Eros Now Music-YouTube


結局、プリヤンカー・チョープラー主演の『メアリー・コム』を撮影した2014年にインドに住み始めました。

これは実在の女性ボクサーの話で、大ヒットした。私の撮影スタイルがインドのカメラマンとは違っていたこともあり、いろいろな方から「すごく良く撮れていた」と言われて、私もちょっと有名になりました(笑)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

無視できない大きさの影響なら政策変更もあり得る=円

ビジネス

ECB当局者、6月利下げを明確に支持 その後の見解

ビジネス

米住宅ローン金利7%超え、昨年6月以来最大の上昇=

ビジネス

米ブラックストーン、1─3月期は1%増益 利益が予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中