「心をえぐられた」「人生で一番泣いた」...ハリー杉山のオススメ韓国映画5本
韓国では光州事件の前年に、朴正煕大統領を大統領直属の中央情報部(KCIA)部長が射殺する事件が起きました。軍事政権にいったん幕が下りた1979年10月26日は、韓国という国が永遠に変わった一日だったと思います。
この暗殺事件に基づく『KCIA 南山の部長たち』(20年)を3作目に挙げます。監督は『インサイダーズ/内部者たち』のウ・ミンホ。非常にうまく作られたサスペンスで、見事なテンポ感に心を奪われました。ミャンマーでいま起きていることを彷彿させるような部分もあり、見ている間はずっと心がひりひりしていました。
KCIA部長を演じ、新たな扉を開いたイ・ビョンホンが最高です。葛藤する彼が髪をくしゃくしゃかき上げるようなシーンで、彼のファンはとろけてしまうはずです。
見たことのないような視覚効果
これらの作品とは違ってちょっとくだらない作風に感じますが、ぜひ見てほしいのが『神と共に』シリーズ。『神と共に 第一章:罪と罰』(17年)、『神と共に 第二章:因と縁』(18年)で、第三章の製作も噂されています。
オープニングで心優しい消防士が火災現場で命を落とす。その瞬間、冥界から使者2人が現れ、主人公に「死後の49日間で7つの地獄で裁判を受け、全て無罪なら転生できる」と告げる――というストーリーがとにかく最高ですが、VFX(視覚効果)も見たことのないようなすごさです。『ハリー・ポッター』の「死喰い人」の何百万倍も怖い怪物が現れたり、『ゲーム・オブ・スローンズ』みたいな描写が次々と出てきたりします。
裁判で使者が消防士を弁護するところは弁護士映画のようでいて、その闘いの場が地獄なのがエグい。例えば、巨大な滝の上から次々と人が流されていくのを背景に裁判が行われます。ダンテの『新曲―地獄篇―』にあるような、「こういう所には行きたくない」と子供の頃に思ったような描写で、そのすごさは見ないと分からないですね。
下界と地獄を行ったり来たりする構成も見事。第二章には僕が大好きな、相変わらずアイドルのウエストくらいの腕の太さをしたマ・ドンソクも登場します。くだらないシーンに笑えて、でも最後には心温まり、泣ける傑作です。