米造船業復活へ大統領令、トランプ氏が署名 中国念頭

4月9日、トランプ米大統領(写真)は米国の造船業を復活させ、海運業界における中国の支配力を低下させることを目的とした大統領令に署名した。ホワイトハウスで同日撮影(2025年 ロイター/Nathan Howard)
Andrea Shalal Jonathan Saul Lisa Baertlein
[ワシントン 9日 ロイター] - トランプ米大統領は9日、米国の造船業を復活させ、海運業界における中国の支配力を低下させることを目的とした大統領令に署名した。
中国製または中国籍の船舶が米国内に寄港する際に入港料を課すことなど、対策を進めるよう通商代表部(USTR)に指示した。同盟国にも同様の行動を求める。
USTRは17日までに具体的な措置を正式に決定する必要がある。USTRがこれまでに提案した港湾使用料に対しては、サプライチェーンの混乱や雇用喪失、インフレ上昇を招くとして、資源輸出業者や海運会社などから厳しい批判が出ている。
USTRのグリア代表は、今月中旬までに救済策に関する最終決定を行うと述べた。また、USTRが当初提案した措置が全て実施されるとは限らないと改めて強調した。
大統領令はまた、船から港に荷物を降ろす大型クレーンや他の貨物取扱設備について、中国で製造されたもの、中国製の部品が使われているもの、中国企業によって所有されているものなどに対し、関税を課すことを検討するよう指示した。
国土安全保障省に対しても港湾維持費などの徴収を厳格に行い、メキシコやカナダの港を経由して陸路で米国に貨物を運ぶことで港湾維持費の支払いを回避する行為を防ぐよう求めた。
米国の海運能力強化のため、海事安全信託基金の創設を促し、財源として関税収入、罰金、料金、税収などを挙げた。
また、商業用部品の建設や造船所、修理施設、乾ドックの改善に民間投資を呼び込むためのインセンティブを提供するよう求めている。
トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に、米国の造船能力を回復するために「多額の資金」が投入されるとの見通しを示した。
「わが国は大きく後れを取っている。かつては1日に1隻の船を建造していたが、今では実質的に1年に1隻も建造していない。しかしわれわれにはその能力がある」と述べた。
戦略国際問題研究所によると、世界全体で毎年製造される商船に占める中国造船企業の割合は貨物容量ベースで50%を超える。1999年にはわずか5%だった。
米造船業は1970年代にピークを迎え、現在のシェアはわずかに過ぎない。