ウーマン村本×パックン「原発や基地をやるきっかけは堀潤さん」
パックン いつですか。
村本 2017年の12月ですね。原発とか、「思いやり予算より沖縄に思いやりを持て」とか、辺野古とか。友達から教えてもらい、共有した怒りをぶつけたいと思っただけですが、そうしたら朝日新聞や東京新聞の取材が来たり、沖縄に行ったときにたくさんの人に囲まれて「ありがとうございます」、タクシーに乗っても「ありがとうございます」って言われたりした。お笑いでちょっと触れただけで、こんなにも喜ばれるのは何なんだろうと思った。でも、海外では当たり前だという話を聞いたり、秋元康さんにご飯に連れていってもらったときに、ジョージ・カーリンの話を聞いたりして。
「社会問題は、そんなのお笑いじゃないって言う」
パックン カーリンはアメリカの有名なコメディアン。知らなかった?
村本 知らなかった。それでジョージ・カーリンのネタを見たときに「何なんだこれは」と震え上がった。でも日本であれをやったら、「お笑いじゃない」と言われると思う。ただ、そう言うのは、幼稚な人たちなんです。それでジョージ・カーリンからレニー・ブルース、デイブ・シャペル、クリス・ロックとかトレバー・ノアとか、アメリカのお笑いを見るようになったら、「あれ、日本のお笑いと何か違うぞ」と。
この前カナダに行ったとき、現地の人から「日本はヤフーの芸能ニュースのアクセスランキングが世界1位なんでしょ」と言われた。海外メディアがネタにしてたんですって。漫才をしていても、原発といった言葉を出すとお客さんの顔が固まる。授業を受けているみたいに、「そんなの聞きに来たつもりはない」という顔をする。社会問題については、そんなのお笑いじゃないって言うんですよ。ただ僕の中では、そう言うのは幼稚な人たちなんです。
日本人ってすごく働くじゃないですか。自分の仕事に直結すること以外のものに触れるには、時間が足りないんじゃないかと思ってる。
パックン アメリカ人も結構忙しいんだけど、芸能ネタよりも政治ネタで発散するかもしれないです。
村本 不満があればね。
パックン 日本人は不満が少ないのかな? それなりにうまくいっている国だからというのもあるか。
村本 でも民主主義を持て余してますよね。選べるのに選ばない。選べるのに選べることに感謝しない。先日、ヨルダンのシリア難民キャンプで授業をしている女性から聞いたんですが、クラスが荒れているので、日直を導入して責任を持たせようとした。誰が日直をやるか選びましょう、と言ったら、上の人間から「選べるということを教えるな」と怒られたらしいんです。
パックン この国に民主的な選挙はないから、っていうこと?
村本 シリアに戻ったときに、「俺たちは選べるんだ」ということになるのが怖いんです。
日本は自由に選べる。でも選べるのが怖くて、選択肢が増えるのが怖いわけですよね。カナダのお笑いの劇場でトイレに行ったら、男女一緒だったんです。トランスジェンダーの人に選ばせるわけにはいかないから、一緒にしたんですと言ってた。すごいなと思って。吉本の劇場も楽屋のトイレは男女一緒なんですよ。それは予算の都合なんですが。
パックン 微妙に違うね......。