最新記事
BOOKS

「お金より○○」と言ってしまう人は「お金への引け目」を捨てることで人生が好転する【富者の思考】

2025年1月29日(水)11時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
貯金箱

お金だけが大事ではないがお金も大事/pixabay

<人生の価値観について「お金より健康」「お金より家族」などと言ってしまいがちだが、本来は「お金も健康も」であり「お金も家族も」であるはずだ>

韓国出身の起業家であるケリー・チェ氏は、ファッション関連事業で約1億円の借金を負ったのち、食品チェーンを起こして復活。英国の長者番付けでベッカム夫妻より上位になった人物だ。現在はチャンネル登録者数53万人のインフルエンサーとして人生を通して成長するための啓発活動を行なう。

そんなチェ氏が成功者たちの共通習慣を分析し、富者の思考法を鍛えるための具体的な方法を綴った『富者の思考 お金が人を選んでいる』(小笠原藤子訳、CCCメディアハウス)は、韓国の大手書店サイトの「2022年今年の本(自己啓発書部門)」に選ばれ、現在112刷まで版を重ねている。

曰く、一時は返せる見込みがない借金を抱えて死まで意識したが、「とにかく生きよう」と決意したからこそ今がある。どん底で試みたのは徹底した意識改革だった。「どうせ自分は」という卑屈なマインドを捨て、「いつかは人のために」という思いで生きていこうと決めた。決意することで人生は決定的に好転しはじめたという。

意識改革に際しては、世界の成功者、単なる富豪ではなく人格的にも尊敬されている「真の富者」たちの本を読み、その思考法を研究しつくした。著作を通して彼らを自分のメンターと位置付けた。チェ氏は言う。「読むだけではだめだ。完全にその方法を習得する覚悟で成功者の功績を踏襲し、そのまま実践しなければならない」。

人生は失敗の繰り返し。だからこそ潰れずに生きるために心の持ち方を重視する。そして、自分なりに体得してきた心を鍛える方法を人々に共有して役立てたいと考えている。『お金が人を選んでいる』より、お金に対するバイアスを手放す重要性を紹介する。(全3回の前編)

◇ ◇ ◇

「お金じゃないもののほうが重要」という言葉の欺瞞

私は人々に富を築くノウハウを伝授している。その過程で、どういう理由からかお金を悪の根源のように見なす人が多いことを知った。「お金じゃないもののほうが重要」という言葉を初めて聞いた時は、物質的な生活を避け、上を目指すための道徳的な処世術のことだと思った。しかしそのうちに、それは富者に対するルサンチマンによって起こる態度だと気づいた。

ルサンチマンとは、弱者が強者に抱く憎しみ、復讐心、激情、嫉妬、 怒りが入り混じった感情だ。ドイツの哲学者ニーチェが提唱した概念で、実際は私がここで簡単に定義したものより、はるかに幅広い意味を持っている。

弱者が強者に抱く猜疑心、これに対する考えを少しだけ変えれば、新たな視点を持つことで世界を見ることができる。では、弱者は強者になるのが嫌なのだろうか? 弱者はずっと弱者であり続けたいのだろうか? そんなことはない。猜疑心の根底には貪欲が潜んでいるのだ。

「お金より幸福が重要」「お金より健康が重要」「お金より家族が重要」というように、お金より何がより大切かを説く文字や言葉に接するたび、私は危うい感覚に陥る。人生はいくつかの要素が均衡する時、ようやく安心感を抱くことができるからだ。お金が多いだけでは幸せとは言えず、家族円満だからといって懸念がないわけではない。

幸せ、健康、家族、お金などのあらゆる要素をまんべんなく手にすべきなのだ。ゆえに、お金も他の要素と同じように重要なのだ。

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

ビジネス

米新規失業保険申請、2.1万件減の22.1万件 予

ビジネス

ECB、5会合連続で利下げ 政策の制約度は低下

ビジネス

米人員削減、2月は245%増 連邦政府職員の解雇が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 9
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 10
    理不尽過ぎるトランプ関税にカナダが激怒、「狙いは…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中