最新記事

メンタルヘルス

部下が適応障害? 親身に相談に乗り、仕事を減らしてあげるのが良い対応とは限らない

2021年3月2日(火)16時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

その半年後、彼は心身の不調をきたし、出社することができなくなってしまいました。そして、「適応障害」と書かれた診断書を提出し、長期の療養生活に入ったのです。あなたはいまさらのように愕然としますが、どうすることもできません。

このようなとき、上司の取りがちな態度として、次のようなことが考えられます。

①どうしていいかわからず、結局何もしない
②「根性」「気のゆるみ」など、精神論に置き換える
③「この程度でおかしくなるはずがない」など、自分の価値観で判断する
④「俺に任せとけ」と親身になりすぎる

①は、様子の変化に気づきさえしないことも含め、最も多いケースです。医務室や産業医など、相談する先があっても利用しない、関わりたくない、関心がないなど、理由はさまざまです。

②は、バブル経済のころまでは当たり前だった価値観です。メンタルヘルス不全の存在すら認めず、人格的な「弱さ」だと決めつけます。戦前の教育の名残があるのかもしれません。

この風潮は、1991年の電通事件(社員の過労自殺に対して会社の責任が初めて認められた事件)をきっかけに、ようやくピリオドが打たれましたが、40代以上の世代では、まだまだ色濃く残っています。

③は、部下の立場に立って考えられていないということです。

部下の心情、能力への配慮を欠きます。そうなる要因の一つに、上司の立場にいる人が競争に打ち勝ってきた、ある程度能力の高い人であるということがあります。

そういう人は、自身の能力を基準に見るので、パフォーマンスの落ちている部下を前にしても、なぜできないのかがよく理解できません。できて当たり前だと思うのです。その結果、「こんなこともできないのか」「このぐらいできるはずだ」など、個人的な価値基準で推しはかり、容赦なく断罪します。

④は、面倒見のよい上司にありがちです。相談に乗ったり仕事を減らしてあげたり、自分なりに親身になって一生懸命です。しかし、その方向性が独善的なため、往々にして意図しない方向に進みます。

このタイプの上司でよくあるのが、「俺がお前をよくしてやる」と部下を抱え込み、1対1の濃密な関係性を作り上げることです。その結果、部下の病状が秘匿され、関係部署との情報共有がなされません。

その上、「会社に知られると、不利になる」「俺に任せとけ」などと気遣って他言することを禁じ、気がつけば、取り返しのつかないまでに悪化させます。

もちろん、適切に対応できている上司もいるでしょうが、メンタルヘルスケア対策が必ずしも十分でないわが国においては、①~④のいずれかになってしまうケースが多いのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中