1件40円、すべて「自己責任」のメーター検針員をクビになった60歳男性
こうして著者は、65歳の定年まで5年を残し、10年に及ぶ電気メーター検針員生活を終える。読者としての立場からしても、ここに出てくる会社のやり方には疑問を感じずにはいられないが、残念ながら、そういうものなのだろう。
そればかりか、同じような境遇にいる人は少なくないはずだ。今後もっと状況は悪くなっていく可能性もある。それが「現実」というものかもしれない。
しかし、だからこそ、著者の以下の言葉に安堵した自分がいたのも事実だ。
私は慎ましい生活で十分である。人生には少しのお金と、少しの生活道具があれば十分なように思う。そして多少の仕事と、自分が没頭できるものがあればよいと思う。(「あとがき――メーター検針員、その後」より)
こんなふうに思っているのは、きっとメーター検針員だけではない。
『メーター検針員テゲテゲ日記
――1件40円、本日250件、10年勤めてクビになりました』
川島 徹 著
フォレスト出版
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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。ベストセラーとなった『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)をはじめ、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。新刊は、『書評の仕事』(ワニブックス)。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。
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