若返りも、働き方改革も「脳のフィットネス」でうまくいく
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Chombosan-iStock.
<例えば、マルチタスクは逆効果で、むしろ生産性が落ちる――。日本ではまだ知られていないことが多いが、身体の健康と同じくらい、脳の健康に気を遣うことが一般的になりつつある>
近年、「脳のフィットネス」が注目を集めている。アメリカでは身体の健康と同じくらい、脳の健康に気を遣い、より効率的に働く脳を手に入れることが一般的になりつつある、とも言われる。その流れを受けて、日本でも、脳に関連する多くの書籍が出版されている。
だが、往々にして「脳関連の本」はページ数が多く、耳慣れない用語が次から次へと登場してきて、読み進めるのも一苦労だ。脳を健康にするための本を読んで、脳が疲れてしまっては意味がない。なんとか読了しても、「結局、何が重要なのか」が頭に残っていないことも多いのではないだろうか。
『脳のフィットネス完全マニュアル』(斉藤裕一訳、CCCメディアハウス)は、分厚い本に萎縮してしまう人でも手に取りやすい、「脳に良いこと」をコンパクトにまとめたガイドブックだ。新書に近い小型サイズで175ページ。文章も簡潔で、日々の生活で「実用」できる造りになっている。
自分を実験台として積み重ねる
本書の著者は、企業幹部から催眠療法士に転身したという異色の経歴を持つフィル・ドブソン。今では世界中の企業経営者を相手に、脳や神経科学に関する知見をビジネスに活用する方法を指導している。脳をよりよく働かせることによって、生産性を上げ、スキルを伸ばし、仕事の効率を高めるのだ。
著者は、脳のフィットネスに影響する要因を5つに分類した「SENSE(センス)モデル」を開発。5つの要因それぞれについて、実践的なポイントを解説している。SENSEとは「ストレス(Stress)」「運動(Exercise)」「栄養(Nutrition)」「睡眠(Sleep)」「経験(Experience)」の5つ。それぞれの要点を簡単に紹介すると......
ストレスをうまくコントロールして(毎朝10〜20分の瞑想)、適度な運動をし(毎朝20分の軽い運動と、週3回の有酸素運動)、脳が好む食事をとって(1日2リットルの水を飲み、地中海式ダイエットで糖質を減らす)、毎日7〜9時間の睡眠を確保する。さらに、新しい外国語や楽器を習って、積極的に人と交わるようにする
――といったものになる。
これらを全て一度に実践しようとすると大変だが、身体のフィットネスと同じで、日常の小さな積み重ねによって、健康的な脳がつくられていくのだ。
著者もこう言っている――「まず、今までと違うことをすぐに試し、それを学習のプロセスと考えてみてもらいたい。実験を自分自身のものにして、うまくいっていることの上に積み重ねていってほしい」。