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課題解決から社会変革へ──アデコ社長に聞いた、日本活性化への道

──人材サービス大手が描く新たな道

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2024年10月22日(火)11時00分
写真:遠藤 宏 文:酒井理恵
アデコ株式会社の平野健二代表取締役社長

2024年4月1日にアデコ株式会社の代表取締役社長に就任した平野健二氏

<人手不足時代のいま、生産性向上や持続的な事業の成長を果たすために需要が高まっているアウトソーシングと外国籍人材。過去に大型のアウトソーシング案件をいくつも手掛け、外国籍人材の雇用支援においても業界をリードするアデコ株式会社の平野健二代表取締役社長に「市場拡大の背景」と「今後の展望」を聞いた>

人手不足のなかで持続的な成長やサービス品質の向上を実現するため、ノンコア業務を外部企業に委託する「アウトソーシング」を活用する企業や自治体が増えている。株式会社矢野経済研究所の調査によると、2022年度の国内BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場は4兆7021億円。今後も発展すると見られ、27年には5兆3160憶円にのぼると予測されている。

アウトソーシングの導入によって企業や自治体はコア業務に注力できるようになり、業務の効率化や生産性向上だけでなく、従業員・職員の負担軽減による職場環境改善といった効果が期待できる。また、外部リソースの活用はスピード感を持って業務を推進することができるのも大きな魅力だ。

例えば、新型コロナウイルス感染拡大により早期かつ大規模な対応が必要となった各自治体は、休業支援金・給付金の支給やワクチンのコールセンターの設置などを速やかに行う必要性に迫られた。ただし業務を執り行う期間は限定的なため、自治体内でリソースを割くことには困難が伴った。

「緊急時でも、知見とノウハウを持った外部企業が代わりに業務を請け負うことで柔軟な対応が可能になる」

そう語るのは、総合人材サービス大手であるアデコ株式会社の平野健二代表取締役社長だ。事実、同社にはコロナ禍に自治体の要請を受けてからわずか1カ月足らずでコールセンターの拠点を立ち上げた実績がある。

企業や自治体にとって、アウトソーシングの導入には大きく3つの課題があるという。委託すべき業務の洗い出し、社内におけるノウハウの蓄積、そして委託先企業での情報漏洩や倒産といったリスクの回避および管理だ。

アデコではオペレーションを実行・管理する経験豊富なスーパーバイザーが中心となってチームの拠点をつくり、顧客企業において業務効率化と生産性向上を実現できる領域を分析するところから関与する。代表的な業務領域は窓口対応、経理・会計、営業事務などだ。委託元に対して定期的にノウハウを共有する体制を構築し、作成した業務マニュアルの提供なども行っている。

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アウトソーシングに適している業務領域

同社はスイスに本社を置き、世界60の国と地域に展開するグローバル企業であり、国内でも官民を問わず大規模なアウトソーシング案件を多数手掛けた実績を持つことが、日系・外資双方の大企業や様々な自治体からの信頼獲得につながっているという。

政府の大型案件を手掛け、アウトソーシング事業の礎を築く

2018年から23年の5年間で、売上高が倍増したアデコのアウトソーシング事業。飛躍を支えたのは、平野氏自身のとある経歴だ。2007年、持ち主不明の年金記録5095万件の存在がわかり、報道でも大きく取り上げられた。

この社会問題を解決するため、2010年から13年にかけて厚生労働省による記録確認のための国家プロジェクトが立ち上がった。このプロジェクトをチームリーダーとして牽引したのが平野氏であった。

「紙台帳等とコンピュータ記録の突合せや、全国の作業拠点で記録の確認業務を行った。これほど大規模なプロジェクトに取り組んだ経験は後にも先にもない。この経験によりアウトソーシング事業における業務のマネジメントや人材の採用・配置に関するノウハウが蓄積され、その後の自治体案件の獲得につながった」と振り返る。自治体案件は公共事業に近い側面を持つため、予算管理も重要なノウハウだ。

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