「本を出したい」人必見...出版社への企画の持ち込みを成功させるコツ【出版業界】
出版社には得意ジャンルがある
まずひとつめです。これは、私もファッション誌で仕事をしていたときはまったく知らなかったのですが、出版社には、それぞれ得意ジャンルの書籍があります。
たとえば、ビジネス書が得意な出版社、暮らしや健康などの実用書が得意な出版社、学習参考書が得意な出版社、タレント本などのエンタメ系が得意な出版社......など。そもそも書籍は扱っていない出版社もあります。
過去に二度、一社は100年、もう一社は50年の歴史を持つ老舗出版社で「その出版社初のビジネス書」を担当する経験がありました。どうしてそういうことになったかというと、どちらも雑誌の編集長さんと「この美容師さんの美容本ではなくビジネス書を出したい」と盛り上がったからです。
ファンの多い2人の書籍は、どちらも発売後数日で重版したのですが、普段そのジャンルを扱わない出版社でつくることの難しさを感じる機会にもなりました。
まず、その出版社にビジネス書の営業さんがいません。ビジネス書の読者に届くPR方法もノウハウがありません。もちろん、それがわかっていてチャレンジしたのですが、畑違いのジャンルに飛び込むのはやはり難しいものだと感じました。編集長肝入りの企画ですら難しいのですから、持ち込み企画であればなおさらです。
まず、あなたが持ち込みたい企画のジャンルが得意な出版社をリストアップしましょう。
単行本向きの企画、新書向きの企画
似たパターンで「さとゆみさん、これ、新書向きのテーマですよ。うち、新書のレーベルがないので無理です」と言われたこともあります。
一般的に、新書は一般書に比べて、時事的な課題や専門的な課題をわかりやすく入門書として提示するジャンルだと言われています。
面白いのが、一般書がビジネス書、実用書、自己啓発本、教養書......などと分けられるのに対して、新書は扱っている内容がビジネスでも教養でも実用でも、「新書は新書」です。書店でも一般書とは違う棚に並べられることがほとんどなので、新書のレーベルを持っていない出版社から新書は出ません。
このあたりの肌感覚は、私は編集者ほどはわかりません。しかし、その方のアドバイス通り、新書を扱っている出版社に持ち込んだところ、すんなりと企画会議を通りました。
売り込み先を変えると企画が通ることがある
「企画が悪いから通らない」ケースはもちろんあります。けれども「企画は良いけれど、売り込み先を間違っている」ことで、企画が通らないこともあります。
私は、断られたときはなるべく「どこを修正すれば出版の可能性があると思われますか?」と聞くようにしています。そして、「もし、ブラッシュアップして持ち込むとしたら、どこの出版社さんがいいと思いますか?」とも聞きます。
もちろん後者の質問は厚かましすぎるので、編集者さんとの関係で言えそうなときしか言いませんが、たいていみなさん親切に教えてくださいます。そこは、編集者さんのほうが圧倒的に相場観があるので、とてもありがたいアドバイスになります。
たった一人の編集者を口説けばいい
同じ編集部内ですら、打診する編集者さんによって、企画が通ったり通らなかったりすることもあります。
ある出版社の編集者さんに企画を持ち込みました。その人には「うーん、今、僕がいる部署ではこのタイプの書籍は出さないと思うんだよね」と言われました。お礼を言ってその場を立ち去った数日後、その方が所属する編集部の別の編集者さんと会う機会がありました。
「さとゆみさん、この間、うちの編集部に来てたんだって?」と言われたので、私は企画を持ち込んで断られたことをお話ししました。するとその編集者さんに、どんな企画? と聞かれたので内容を説明したら、「興味あるなあ。一度、著者さんと一緒に打ち合わせをしてみたい」と言われ、トントン拍子で出版が決まりました。
その書籍はその後、5刷まで重版しています。「この企画はうちでは難しい」と言った編集者さんと、「うちからこの本を出しましょう」と言った編集者さんは同じ編集部でデスクを並べて働く仲です。
何が言いたいかというと、企画が通るかどうかは、それくらい持ち込んだ編集者さんとの相性によるということです。読者ファーストが大前提とは言え、最初に口説かなくてはならないのは、たった一人の編集者です。