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「役員予定」だった娘婿は生まれて4日の息子と引き離され離縁のうえ会社を解雇 超名門企業の創業家「男児を世継ぎに」という時代錯誤な執着

2023年12月22日(金)16時45分
吉田修平(ノンフィクションライター) *PRESIDENT Onlineからの転載

「愛する息子に会いたい、父子の絆を取り戻したい」

「しかし裁判所はこの点についても、被告側は主張していないのになぜか忖度し、出向であることは認められるが配置転換に準ずるから問題なし、と信じられない判断をしています。こんな判断がまかり通って判例にでもなろうものなら、すべての労働者にとって極めて不利な恐ろしい状況になってしまいますよ。判決内容のすべてが、近年まれに見る異常な不当判決です」

ちなみに、当事者であった和英会長は訴訟中の2022年8月、急性心不全のため死去。現在、妻の美和氏が会長、一度は失脚させられた長女の裕子氏が社長となっている。大輔氏の元妻・聖子氏は一時は代表取締役だったが、現在は長女と逆転して副社長となっている。

大輔氏は、今後は日本ばかりか英国でも法的な闘争を続けていくという。

「愛する息子に会いたい、父子の絆を取り戻したいという一心でこれまで約9年間、日本で闘ってきましたが、日本の司法には心底失望しました。もちろん日本での闘いも続けていきますが、今後は英国でもミツカンを提訴します。英国はもともと『親子の権利』を非常に尊重する国で、親子の交流は基本的人権であるという意識が根付いています。

海外では英高級紙『THE TIMES』が報道

そして実際、まだロンドンに居住していた2018年、僕は英国の裁判所に親子の交流権を申し立てて完全勝訴し、英国裁判所が『父子をすぐに交流させよ』と命令を下したため、僕と息子はつかの間の再会を果たしているのです。ところが義父母、ミツカンらは姑息(こそく)にも『英国ではなく日本で判断すべきだ』と日本の家庭裁判所に逃げ込み、英国裁判所の命令を無視して親子の引き離しを続けているのです」

今回大輔氏が英国での闘いを決意した背景には、元妻・聖子氏がロンドンに居住していると思われることと、一連のこの事件について、英国でも大々的に報道されている事実がある(英高級紙『THE TIMES』2021年6月24日付)。

さらに、大輔氏はミツカンを解雇された直後の2021年6月、外国特派員協会からの求めに応じる形で記者会見も開いたが、多くの外国人記者らが驚きをもって質問してきたという。

「このような親子引き離しは重大な人権侵害だし、児童虐待として犯罪行為に当たるのではないか、という指摘もありました。日本の大手メディアは関心を示しませんでしたが、欧米ではその後、例えば英国の『BBC』が親子の権利、子どもの権利をないがしろにしている日本の親子法制などを問題視する特集番組を報道しています」

英BBCといえば、一連のジャニー喜多川氏による性加害問題をいち早く世界に向けて報道し、日本の大手メディアも無視できずにその後の流れを導いたことでも知られる。

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