最新記事
日本企業

「役員予定」だった娘婿は生まれて4日の息子と引き離され離縁のうえ会社を解雇 超名門企業の創業家「男児を世継ぎに」という時代錯誤な執着

2023年12月22日(金)16時45分
吉田修平(ノンフィクションライター) *PRESIDENT Onlineからの転載

抗議活動を行う中埜大輔氏

ミツカン本社前で抗議活動を行う中埜大輔氏(本人提供写真)

判決に耳を疑い、悲鳴にも似た叫び声をあげた

前者の訴訟は今年2月に敗訴した。東京地裁判決では「次女は中埜家の家風や価値観を大事にする考えを持ち、子が生まれた場合は両親と養子縁組させる可能性があると、婚姻前から大輔さんに説明していた」と指摘。次女は離婚する意思があったとして「前会長夫妻が強要する必要はなかった」と判断した。大輔氏はその後控訴したが、11月の控訴審でも敗訴している。

そのため後者の判決に望みを託していたが、冒頭で触れた通り完全敗訴だった。

法廷内にどよめきが流れたのには理由がある。

大輔氏がロンドンで妻子との別居を命じられたあと突如関西の配送センターに配転され、それが不当であるとする仮処分の申し立てが認められたことはすでに触れた。

今回敗訴した訴訟は、この仮処分決定を受けてのいわば本訴であるため、当然、仮処分の認定に沿った判断が下されると大輔氏自身も支援者らも信じていた。だからこそ、判決に耳を疑った。「ええええーーーーーっ」。裁判官が退廷した直後に悲鳴にも似た叫び声をあげた大輔氏が改めて言う。

「片道切符で日本の配送センターに飛ばしてやる!」

「判決文を精査しましたが、あまりにも不当というより杜撰な審理に愕然とし、怒りを覚えました。日本の司法がまさかこの程度のいい加減なものとは......。僕の主張には、すべてに揺るぎない証拠があるのです。メール、会話を録音した音声データ、それに義父母らとミツカンの役員、顧問弁護士らが策謀を巡らしていた秘密協議の議事録などなど。それも、一部ではなく膨大なものです。

それらは証拠として採用もされているし、それにともなった証人尋問でもそれらの証拠は偽造などでもなく本物であると認定されています。にもかかわらず、判決文では、そうした証拠にもとづく僕の主張の事実整理すら行われておらず、証拠を無視し、あえて判断を避けているとしか思えない内容になっているのです」

例えば、大輔氏の長男が生まれた4日後に和英会長が養子縁組届書に署名を迫った際に怒声とともに浴びせた「この場でサインしなければお前を片道切符で日本の配送センターに飛ばしてやる!」との言葉は、後日、和英会長と美和副会長、それにミツカン役員が謀議した際の録音音声データが証拠採用され、裁判でも発言を認めていたにもかかわらず、判決では「許容範囲である」としてスルー。

被告人が証言していないことまで判断している

また、同謀議でミツカン顧問弁護士が、大輔氏への配転命令が法的に不自然にならないように注意すべきであるとか、離婚させるタイミングなどについても詳細に意見を述べているメモも証拠採用されているものの、判決ではこれについての言及は一切なく、完全スルー。

大輔氏の代理人弁護士のひとりである野崎智裕弁護士もこう憤る。

「これだけ具体的な証拠の数々があり、被告側の証人尋問でも認めている事実が少なくないのに、そうした証言内容についてはほとんど触れていないという異常な判決です。

逆に、和英会長の『片道切符で飛ばす』云々の発言については、本人尋問でも発言を認めているのに、判決文では『(大輔氏に)カツを入れようとして言った言葉である』などと、発言した本人はそんな証言などしていないのに、まるで被告側に忖度(そんたく)したかのような判断をしています。

加えて、大輔氏が"飛ばされた"先の配送センターは実は社内の異動ではなく別法人への出向であるから、労働基準法に照らしても本人への面接や説明が必須であるのに一切ないままの命令でした」

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国が報復措置、全ての米国製品に34%の追加関税 

ビジネス

台湾、米関税対応で87億米ドルの支援策 貿易金融な

ビジネス

世界食料価格、3月前年比+6.9% 植物油が大幅上

ビジネス

EUは米国の関税に報復すべきではない=仏財務相
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 3
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 8
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 9
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 10
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中