そごう・西武ストが企業買収に波紋 従業員の理解も留意点になるのか?
セブン&アイ・ホールディングス傘下の百貨店、そごう・西武の労働組合は8月31日、旗艦店の西武池袋本店でストライキに突入した。写真は西武池袋本店前でチラシを配るそごう・西武労働組合の組合員。同日午前、東京都豊島区で撮影(2023年 時事通信)
セブン&アイ・ホールディングス傘下の百貨店、そごう・西武の労働組合は31日、旗艦店の西武池袋本店でストライキに突入した。ストが少ない日本でも賃上げを要求するのが一般的で、買収後の雇用維持や事業継続を求めるのは異例。M&A(合併・買収)はリストラを前提にすることが多く、今回の動きを機に従業員の理解も買収側が留意すべき点になるとの指摘が専門家からは出ている。
外資の買収にも影響か
日本の主要百貨店でストが行われるのは61年ぶり。西武池袋本店では、約900人の組合員が業務を離れた。不十分な人員体制での運営で顧客に迷惑をかけることを避けるため、全館臨時休業することを決めた。
「こういう声がどれくらい届くのか分からないけど、行動することは大事だと思う」と、31日午前に池袋本店の近くを通りかかった斉藤里美さん(61)はロイターの取材に語った。休館になることを知っていた斉藤さんは、前日に必要な買い物を済ませたという。
61年前に阪神百貨店で行われたストは、日本で過去によく見られたように賃上げを巡るものだった。それが今回はM&Aに絡むストで、「かなり異例」(労働組合関係者)だ。
立教大学の首藤若菜教授は「企業売却や分割などの企業再編で、雇用喪失や労働条件の低下が起きることは珍しくないが、これまで多くの労働組合はそういったことを飲んできた面がある」と指摘。そごう・西武労組のストに言及した上で、「従業員の意向を十分にくみ取らずに決定することのリスクを示したことになり、社会的にも意義がある」と語る。
こうした労組の動きは、買収後に大規模なリストラを実施するイメージが強い外資系企業にも影響を及ぼすかもしれない。
セブン&アイHDは米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループへのそごう・西武売却を決め、ここまで話を進めてきた。同労組の寺岡泰博中央執行委員長は28日、スト通知を発表した際の記者会見で「この株式譲渡で雇用維持が本当にできるのか不安が拭えない」と語った。
日本企業に関する国際間取引を手掛ける弁護士、スティーブン・ギブンズ氏は「外国人でも力ずくで日本企業を買収することはできるが、実際に日本企業で経営、働いている人たちが結果に満足していなければ、何の役にも立たない」と話す。「外資の買収希望者が心に留めておくべき注意事項のひとつだ」と語る。
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