最新記事
日本企業

そごう・西武ストが企業買収に波紋 従業員の理解も留意点になるのか?

2023年8月31日(木)13時14分
ロイター
西武池袋本店前でチラシを配るそごう・西武労働組合の組合員

セブン&アイ・ホールディングス傘下の百貨店、そごう・西武の労働組合は8月31日、旗艦店の西武池袋本店でストライキに突入した。写真は西武池袋本店前でチラシを配るそごう・西武労働組合の組合員。同日午前、東京都豊島区で撮影(2023年 時事通信)

セブン&アイ・ホールディングス傘下の百貨店、そごう・西武の労働組合は31日、旗艦店の西武池袋本店でストライキに突入した。ストが少ない日本でも賃上げを要求するのが一般的で、買収後の雇用維持や事業継続を求めるのは異例。M&A(合併・買収)はリストラを前提にすることが多く、今回の動きを機に従業員の理解も買収側が留意すべき点になるとの指摘が専門家からは出ている。

外資の買収にも影響か

日本の主要百貨店でストが行われるのは61年ぶり。西武池袋本店では、約900人の組合員が業務を離れた。不十分な人員体制での運営で顧客に迷惑をかけることを避けるため、全館臨時休業することを決めた。

「こういう声がどれくらい届くのか分からないけど、行動することは大事だと思う」と、31日午前に池袋本店の近くを通りかかった斉藤里美さん(61)はロイターの取材に語った。休館になることを知っていた斉藤さんは、前日に必要な買い物を済ませたという。

61年前に阪神百貨店で行われたストは、日本で過去によく見られたように賃上げを巡るものだった。それが今回はM&Aに絡むストで、「かなり異例」(労働組合関係者)だ。

立教大学の首藤若菜教授は「企業売却や分割などの企業再編で、雇用喪失や労働条件の低下が起きることは珍しくないが、これまで多くの労働組合はそういったことを飲んできた面がある」と指摘。そごう・西武労組のストに言及した上で、「従業員の意向を十分にくみ取らずに決定することのリスクを示したことになり、社会的にも意義がある」と語る。

こうした労組の動きは、買収後に大規模なリストラを実施するイメージが強い外資系企業にも影響を及ぼすかもしれない。

セブン&アイHDは米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループへのそごう・西武売却を決め、ここまで話を進めてきた。同労組の寺岡泰博中央執行委員長は28日、スト通知を発表した際の記者会見で「この株式譲渡で雇用維持が本当にできるのか不安が拭えない」と語った。

日本企業に関する国際間取引を手掛ける弁護士、スティーブン・ギブンズ氏は「外国人でも力ずくで日本企業を買収することはできるが、実際に日本企業で経営、働いている人たちが結果に満足していなければ、何の役にも立たない」と話す。「外資の買収希望者が心に留めておくべき注意事項のひとつだ」と語る。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中