10万件の悩み相談を受けた精神科医が気付いた、メンタル不調を抱えてしまう人の「共通項」
悩みが小さいうちに「これってどうなんですかね?」と軽く聞くのがいいと思います。困って困ってどうしようもなくなってから相談しても、「なんではやく言わないんだ!」と怒られてしまう。それでも難しいなら、私はもう「雑談」しかないと思います。
たとえば普段の会話で「あの件どうなってるの?」と聞かれたら、「A社の担当者がちょっと渋ってるんですよね」とか、気軽に言ってみる。このくらいのときに言えると、すぐに対処できますよね。
私は「キャッチボール」とよく言うのですが、とりあえずボールを投げたら返ってきます。でもみなさん投げないで、ずっと持っているんですよ。それでは進まないですよね。
──頭ではわかっていても、一歩を踏み出せない人も少なくないと思います。メンタルブロックはどうやったらはずせますか。
「自己洞察力」をつけることですね。メンタル疾患になりやすい人は、自己洞察力が低いんです。たとえば「最近、仕事が忙しくて疲れてるな」と自覚できる人は、「今日はきちんと睡眠とろう」とか「飲み会には行かないで休もう」と対処できるけど、それに気づけないから、「睡眠時間減らしてもっと頑張らないと!」となる。根性で乗り切ろうとするから、おかしな方向に行ってしまうんです。だから、自己洞察力をつけること。そのためには、普段から書く習慣をつけることですね。
私は映画を見たあとに感想を書いているのですが、「この映画は面白かった」「ではなぜ面白いのだろう」「主人公が自分にないものを持っているから」と感想の理由を深堀りすると、必ず自己洞察につながっていくんです。
──チームや組織の言語化力を上げるために、心がけるべきことはありますか。
リアルなコミュニケーションを大切にしてほしいですね。その基本は、挨拶や雑談。休憩時間に「どう?」と声をかけることはメンタル的にもいいし、職場の生産性を高めるという結果も出ています。
オンラインではミーティングの前に「今週あった楽しいこと」など、誰でも話せるお題を決めて、アイスブレイクをしたらいいのではないでしょうか。楽しいことを話すだけでドーパミンが出て、楽しい気持ちになるんですよ。
未来の自分を信じて淡々とやり続けること
──本書では「あきらめること」の重要性にも触れています。
本当に追い詰められたときに、あきらめたり手放したりすることができたら、少なくともメンタル疾患にはならないと思います。昭和的な根性論を引きずっている人もいますが、そろそろ卒業してほしいですね。