40、50代こそリスキリングが必要...なのに「勉強すべき人ほど勉強しない」日本の会社員
もう1つの成功事例は、1906年に創業し電話帳印刷をおこなっていた西川コミュニケーションズ。電話帳のニーズ減少を見越して、2013年から業務時間の20%をリスキリングに充てました。社長自らG検定に合格し、従業員400名のうち約5分の1がG検定合格へ。こうしてデジタルマーケティングや3Dグラフィックへ事業をピボットさせ、人材の成長事業への移行にも成功しています。
「ヒューマンタッチ」の分野は、レッドオーシャンと化す
後藤 人類は、AIをつくる人(エンジニアなど)、AIを使う人(経営層)、そしてAIに使われる人の3種類に集約されると考えています。なかには、「ヒューマンタッチ(人間らしさが求められる領域)を極めるのでデジタルのスキルは不要」という人がいますが、今後はヒューマンタッチのあり方も変わります。ヒューマンタッチの極致は、人間であることの必然性がある分野。つまり、心理カウンセラーや占い師といった領域ですが、志願者が増えてレッドオーシャンになるでしょう。ヒューマンタッチの強みとデジタルの知識をかけあわせて自分なりのポジションを築くほうが、差別化を図りやすいと思います。
大賀 今後AIはスマホやSlackのようなITツールと同じ立ち位置になっていくと思います。スマホやPCが使えないと仕事にならないのと同様、革新性や生産性の高い取り組みをするには、AIを駆使できることが欠かせません。
後藤 大事なのは、情報収集の仕組みを変えて、海外の情報源も取り入れることです。たとえばGoogleのAR Glassでは、英語と中国語の方言とを翻訳することが可能です。また、画像認識により手話を読み取って、手話を知らない人との会話をリアルタイムでサポートできています。これはGoogle Glassの応用版で、2024年に商品化されます。この事実は2022年5月にGoogleが発表していましたが、日本でこの情報をキャッチアップしているビジネスパーソンはほとんどいないのが現状です。海外のリソースから情報収集できるかどうかはますます重要になってきます。
大賀 戦略を立てるには、テクノロジーが自社サービスにどんな影響を与えるかを念頭におく必要があります。Google Glassにせよ、VRヘッドセットにせよ、新しいテクノロジーをベースにしたプロダクトを実際に使ってみることも、大事な情報収集になりますね。
後藤宗明(ごとう むねあき)
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事
SkyHive Technologies 日本代表
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。営業、マーケティング、教育研修事業を担当。2001年ニューヨークへ移住直後の9月11日、ワールドトレードセンターへの飛行機の衝突と崩壊を肉眼で目撃し、翌日からグラウンドゼロの救済ボランティアに参加。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業、卒業生約2000名を輩出。2008年に帰国し、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人の設立に尽力。その後米国フィンテック企業の日本法人代表、通信ベンチャーの国際部門取締役を経て、アクセンチュアにて人事領域のDXと採用戦略を担当。2019年AIスタートアップのABEJAにて事業開発、AI研修の企画運営、シリコンバレー拠点を設立。2020年、10年かけて自らを「リスキリング」した経験を基に、リクルートワークス研究所にて「リスキリング~デジタル時代の人材戦略~」「リスキリングする組織」を共同執筆。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。2022年、AIを利用してスキル可視化を可能にするリスキリングプラットフォーム、SkyHive Technologiesの日本代表に就任。
石川県加賀市「デジタルカレッジKAGA」理事、広島県「リスキリング推進検討協議会/分科会」委員、経済産業省「スキル標準化調査委員会」委員、リクルートワークス研究所 客員研究員を歴任。政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。
flier編集部
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