「話し上手」になるために、まず見直すべきは「相手の話を聞く」姿勢と準備
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<話すために重要なのは、まず聞くこと。会話の瞬間に集中できていない人は意外と多い。「マインドマップ」を使って準備することも、場合によっては有効だ>
「話し方」をテーマにした本が続々とベストセラーになる昨今、「会話」に対して、これまでとは少し違った価値が求められるようになってきた。単に情報を伝達するための言葉のやり取りではなく、相互に心を通わせるようなコミュニケーションとしての「会話の技術」を得るには、どうすればよいのか。
韓国で、毎回作家をゲストに迎えてトークするポッドキャスト「チェキラウト──キム・ハナの側面突破」が人気のキム・ハナ氏は、互いに心地よく、良さを引き出し合うような化学反応にも似た会話を「良質な対話」と呼ぶ。彼女の最新刊『話すことを話す』(CCCメディアハウス)から、「良質な対話のために考えること」について書かれた部分を抜粋して紹介する。
【記事前半はこちら:誰とでも心地の良い「良質な会話」ができる、テクニックより大事な「意識」とは】
■聞いて、その瞬間にいるということ
私は、一対一の対話の相手として出演した人が本領を発揮することができるように、適切な所で反応し、適切な質問を投げかけて、すばらしい二重奏が奏でられるようにしたいと考えている。そのために最も集中して行うのは「聞くこと」だ。
人は、私がポッドキャストの進行をしているというと、「話すこと」をしているのだと考える。でも、それは違う。話すためにはまず聞かなければならない。対話においては聞くのが八割で、話すのは二割だ。よく聞かなければ、うまく話すことはできない。よく聞くことで、微妙に上昇する対話のボルテージとリズムを感知することができ、それをより引き上げたり、引き下げたりすることができる。
そして、何よりも、よく聞かなければ「その瞬間」にいることはできない。エディター出身で、すばらしいインタビュアーでもある私の同居人ファン・ソヌが、いつかこんな話を聞かせてくれた。
テレビの特集番組で韓国人のインタビュアーが外国の著名人にインタビューするのを見たとき、そのインタビュアーは完璧な英語を駆使していたものの、自分の発音と質問リストに書かれた次の質問を投げかけるタイミングにばかり気を取られていて、インタビュイーの答えに注意を傾けていなかった。だから、会話の臨場感も面白みもまったく感じられなかったという。
私は、インタビュアーが「その瞬間」にいなかったのだと思う。英語の発音とか、「私がどう見えるか」という問題を忘れるほどその瞬間の会話に没頭していたら自然と相手の答えに反応していただろうし、相手の答えの中で気になる点についてさらに突っ込んで質問していただろう。「その瞬間」にいるということは、それほど集中しているということを意味する。
相手の質問に私が答えているのに、相手が上の空で聞いていると感じた経験は誰にもあると思うが、相手が私に集中していなければ、誰でもすぐにそれを感じ取ってしまうものだ。誰がそんな相手に私の大事なこと、つまり、本心をさらけ出すだろうか。