ビットコイン過去最高値、オンチェーン分析で見えた長期保有者の動向
マイニングプールは、今年9月に入ってから、ビットコイン価格が7月底値から106%上昇したことを受けて、利益確定の売りをしたと思われます。ただそれ以降、マイニングプールは蓄積を再び加速させ、9月29日以降でマイニングプールの保有量は741億ドルから1115億ドルへと50%近く増加しました。
先日、北米拠点でかつ株式公開をしている7つのマイニング企業(Riot、Marathon、Bitfarms、Hut8、Greenidge、ArgoおよびHIVE)は、合計で2万459ビットコイン(約130億ドル)を保有していることが明かになりました。この他にも、CleansparkやBIT Digital、Greenidgeなどもビットコインの保有量を増やしています。こうした企業の中には、ビットコインを売却せずに、資金を借りて諸経費を払うところもあると言われます。
マイナーの保有動向も、長期保有者による蓄積トレンドの証左になるでしょう。
「クジラの保有動向」Value in Wallets With ≥ ₿100 (Whales)
さて、ここで気になるのが、どのようなタイプの長期保有者が蓄積フェーズを牽引しているのかという点かもしれません。そこで便利なのが、クジラの分析です。
クラーケン・インテリジェンスでは、100ビットコイン以上保有するアドレスをクジラと定義しています。オンチェーンのデータを見てみますと、クジラが「供給ショック」の犯人であることが分かります。
10月初め以降でクジラが保有するビットコインの1週間平均は0.1%増加し、1188万BTC(約7210億ドル)を記録しました。このペースで増加を続けると、クジラによるビットコイン保有量は月末までに過去最高を更新するかもしれません。
長期保有者の中でも、クジラのような大口投資家が利益確定より、蓄積を優先させていることが分かります。
上記のように、9月に1万ドル以上下落したビットコイン相場ですが、長期保有者の蓄積による「供給ショック」の影響で、10月の相場はマクロ的に健全な状態で推移していることが分かりました。過去最高値を一時更新した後も、長期保有者は利益確定という誘惑に屈することなく蓄積モードを維持しました。以上のようなオンチェーン分析を通じて、「供給ショック」の傾向がますます強くなっていることが読み取れます。
参考:October 2021 Crypto On-Chain Digest
[筆者]
千野剛司
クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)- 代表慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社。2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。