元犯罪者の雇用を促進せよ、「訳あり」人材が企業と経済を救う
Second Chances
アメリカでは1900万人が重罪で有罪判決を受け、さらに数千万人に軽罪の犯罪歴があって、それが高収入の仕事に就く大きな壁になっている。服役を終えて地域社会に戻る人は毎年60万人を超える。
既にアメリカの就業者数は約1億5000万人、好景気の年にはさらに200万~300万人が加わるのだから、これは大変な数だ。先見の明のあるビジネスリーダーたちにとっては大勢の有望な人材が手付かずで埋もれているわけだ。
出所1年目の失業率は推定50%前後。もちろん、求職者は多くてもいい労働者になるかどうかは分からない。
セカンドチャンス雇用の現実味については、大規模な調査報告も、私が知り得た非公開のリサーチ結果も、こうした雇用の先駆者である企業トップの証言も、全て一致している。いい人材を採用し適切に支援すれば、元犯罪者は特に熱心で忠実な労働者になる。自分の仕事に誇りを持ち1つの会社に長くとどまることは、生産性のある──かつ利益を生む──従業員の要素だ。
服役していた人々が再出発のために克服しなければならない壁は大きい。それを考えれば、多くの元犯罪者が実は「気骨のある人」だと理解できる。社会的烙印にとどまらず、連邦法と州法には約4万4000の「副次的影響」があり、それらが地位向上に必要な免許や信用や住まいなどを入手しにくくしかねない。
社会的なメリットも大きい
セカンドチャンス雇用はもう単なる希望的観測ではない。経営陣は長期的な人材不足を認識するようになり、アメリカの刑事司法制度の欠陥についての理解も進んできた。
フィフス・サード・バンクは数年前から全米各地で啓発のためのセミナーを主催し、顧客との直接的なコミュニケーションを図ってきた。ビジネス界が結束し、人事担当者向けの研修、試験的プログラム、企業間のデータ共有といった、支援システムづくりも進んでいる。
多くの中小企業も一役買えるが、それには1時間のセミナーを受講するだけでは不十分。私は新著『手付かずの人材──セカンドチャンス雇用でビジネスもコミュニティーもうまくいく』の中で事業へのメリットと優良事例を紹介している。
セカンドチャンス雇用はあくまでもビジネスであって慈善事業ではないが、社会にもメリットはある。罪を犯して刑に服した人々の更生には雇用が不可欠。こうした雇用機会を与えられず再犯を招けば、被害者や司法制度が被る経済的損失は数百億ドル規模に上る。