DXには日本の生き残りがかかっている──確実に訪れる変化への対応に必要なもの
── コロナ禍の影響で日本のDXは加速しているのでしょうか。
そうですね。コロナをきっかけに時計の針が早まり、日本の産業界全体でDXの動きが加速しています。消費活動がデジタルに移行したため、企業もまたデジタルシフトを真剣に迫られているのです。もちろん自動車業界のように、CASE(※注2)に対応すべくビジネスモデルを根本から見直そうとしている業界もあります。
だからこそ、ここでDXに乗り遅れると、あらゆる業界で起こる再編の波に飲み込まれ、日本はさらに「失われた30年」を過ごすことになってしまう。生き残りをかけて是が非でもDXを実現していかないといけない。それを伝えたい一心で、本書『ZERO IMPACT』の執筆に至りました。
(※注2):CASEとは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語を指す。
ZERO IMPACT ゼロ・インパクト
著者:鉢嶺登
出版社:日経BP
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自社の存在意義を問い続けた先
── 御社は昨年社名を変更してDX支援事業に注力するという大転換を果たしました。伸びている事業からの転換には大変さがあったと思います。その経緯と、変革への意志を支えたものは何だったのか、教えていただけますか。
私たちデジタルホールディングスもまさにDXに挑戦中です。もともと本業のネット広告代理事業は伸びており、黒字で利益が出ているのに業態を変える必要性はなかったといえます。
しかし、ネットの特性を考えると、代理店のような中間業者の存在がなくならないまでも、付加価値が低減していくのは目に見えていた。それに、ネット広告よりもDX支援の方が社会的意義が大きいのではないか。自分たちの存在意義とは何か、社内で議論を繰り返しました。
DXは社会の要請であり、デジタル化に困っている企業は目の前にたくさんいらっしゃる。一方、私たちの会社には約1600人のデジタル人材がいる。それならDXを推進するデジタルシフトカンパニーに進化することで、さらなる社会のニーズに応え、未来の産業界の発展に寄与できる。それこそが自分たちの存在意義ではないか――。
変化にあらがうのではなく、変化の波を乗りこなそう。そうした決意のもと、2020年7月にデジタルシフト事業へと主力事業の転換を宣言しました。
もちろん現場での混乱も少なからずありました。それでも現場の一人ひとりが変化のなかで自社の進むべき道は何か、主体的に考え、行動してくれています。そんな試行錯誤を経験している私たちが、日本におけるDXのモデルケースの一つになればと考えています。