DXには日本の生き残りがかかっている──確実に訪れる変化への対応に必要なもの
「攻めのDX」を進めるCDOを社内で育成せよ
── 組織がDXを進めるうえでの戦略の肝を教えていただけますか。
国や自治体、あらゆる企業が最初に取り組むべきことは「守りのDX」です。従来の業務プロセスをデジタル化し、コストダウンと生産性向上をめざしていく。
たとえば、押印を含む承認作業の電子化、コールセンターのチャット移行、RPA導入がわかりやすいでしょう。次に取り組むべき本当の意味でのDXは、デジタル産業革命時代に合った形でビジネスモデルを創造・再構築する「攻めのDX」です。
私たちが推奨するのは、攻めのDXを進めるCDO(最高デジタル責任者)を置くことです。CDOは、顧客の環境変化やテクノロジーの進化にも目を配らないといけません。
もちろんCDOを設置して終わりではなく、DXを実現するために必要な職種は全部で4つあります。CDOを長とするプロデューサー、マーケッター、エンジニア、クリエーター。これら4職種人材を調達しないことには、DXは遅々として進みません。
今後IoTが進み、あらゆるもののデータが取得できるようになり、デジタル中心の社会になる。予測が難しい複雑な世の中で、これは明白に予見できます。それならば、未来がくるのを待つよりも、先に飛びこんだほうが成功確率は高まるはず。そのためには、トップ自身に、「DXは必要不可欠」と唱え続ける強い意志とリーダーシップが求められます。
── 経営のトップがDXの必要性をそこまで感じていない場合に、参謀や管理職層にできることは何でしょうか。
自社には関係がないと思っても、取引業者をはじめ、まわりの企業はすでにDXを見据えて動いています。その影響が早晩及ぶのだという具体例を示すことでしょう。
たとえば、ある中小のガラス建材メーカーでは、トップが将来を見据えたDXを進めています。そのメーカーの納品先は、スマートオフィスやスマートシティに取り組むであろう大手のオフィスビル。そんな彼らが納入業者として選ぶのは、デジタルに詳しく、スマートオフィスやスマートシティへの知見のある会社のはず。
そうした未来を見据えて、そのガラス建材メーカーはデジタルに備えているのです。これはあくまで一例で、変化に備えようとする方々に役立つ具体例を『ZERO IMPACT』では多数取り上げています。