新型コロナが問うオフィスの存在意義 NYの象徴エンパイアステートビルにも変化の波
エンパイアステートビル入居で信頼確保
テナントの一部には、エンパイアステートビルを離れるつもりはないという声もある。
たとえば2013年に11年間の賃貸契約を結んだシャッターストック。最高人事責任者のヘイディ・ガーフィールド氏は、同ビルのオフィスに復帰する時期と方法については当局の指示に従っている、と話す。
インターネットでストック写真や編集ツールなどを提供する同社は、エンパイアステートビルに8万5000平方フィート(約8000平方メートル)のオフィスを構える。開放感のあるオフィスには、大きなカフェ、図書室、テラス、フィットネススタジオ、ラウンジエリアが揃っている。新型コロナ流行前には、社員が不満を口にするとすれば、ドリンクサーバーの故障だけだった、とガーフィールド氏は言う。
ヒューマン・ライツ・ファウンデーションやヒューマン・ライツ・ウォッチといった、もう少し規模が小さい非営利団体によると、この象徴的なビルに入居していることで、献金者や支援者などから信頼を得られるという。
ヒューマン・ライツ・ファウンデーションのトル・ハルボーセン代表は、「エンパイアステートビルにオフィスを構えることは、私たちの評判にとって大切な要素だ」と語る。「相手はすぐに、こちらの財務体質が良好で実際に活動していると考えてくれる」
一方で、働き方がどう変わっていくか不透明なことから、出社しなくても業務に支障がないのであれば、オフィスに巨額の投資を行う意味があるのか疑問を抱くテナントもいる。
エンパイアステート・リアルティによると、マンハッタン地区の同社ビルの賃料は、新型コロナ前は1平方フィート(約0.1平方メートル)当たり平均65.19ドルだった。米国の不動産企業CBREグループによれば、5月末の時点で、マンハッタン地区の賃料は平均81.64ドルである。
CBREでディレクターを務めるニコル・ラルッソ氏によれば、パンデミックの最中も賃料の水準が大きく変わらなかったのは、新規物件がほとんど供給されなかったためだという。経済活動の再開に伴い、賃料を見直す動きが増えるのではないかと、同氏は話す。
来訪者にマスク着用義務付け
エンパイアステートビルに来た人は、すぐさま「新常態」に直面することになる。ビルに入るにはマスク着用が義務付けられ、各自が消毒用のローションを持ち歩かなければならない。
入居するテナント企業によると、一部のビル出入り口は閉鎖され、商店が並ぶ低層階では体温チェックや消毒のための場所が設けられた。エレベーターホールでは、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を保って待つよう床にステッカーが貼られている。
賃貸契約の見直しを進める企業もある。
化粧品メーカーのコティは今月、エンパイアステートビルに確保していた計5万平方フィート(4600平方メートル)以上のスペースを、マイクロソフト傘下のリンクトインに譲った。
旅行サイトを運営するエクスペディア・グループは72階に9000平方フィート(836平方メートル)のスペースを借りていたが、流動性を確保するため「いくつかの不動産関連プロジェクト」を先送りしたという。
グリーン・ストリート・アドバイザーズのアナリストであるイズマイル氏によれば、パンデミックが終息しても、オフィス市場には不可逆的な変化が残る可能性は高いという。
「大手企業は、社員にとって在宅勤務の快適さが改善されていることに気づいた。これは将来も加速していく可能性が高い」
Imani Moise Echo Wang (翻訳:エァクレーレン)
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