新型コロナが問うオフィスの存在意義 NYの象徴エンパイアステートビルにも変化の波
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エンパイアステートビルのエレベーター内。ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つよう、足元にステッカーが貼られている。6月24日、ニューヨーク市マンハッタンで撮影(2020年 ロイター/Mike Segar)
マンハッタンにそびえるエンパイアステートビルは、約90年にわたり米国の経済力の象徴だった。だが最近では、新型コロナウイルスとの困難な戦いの象徴になっている。
高さ443メートル、102階建てのアールデコ調のこの高層建築は、新型コロナウイルスの流行が深刻な状況に陥る中で、今はほとんど無人の状態だ。医療従事者など「エッセンシャル・ワーカー」に敬意を表するため、救急車の警告灯の象徴である赤と白のライトが点滅している。
都市封鎖(ロックダウン)が解除され、ニューヨーク市が経済再開の第2フェーズに入って1週間。エンパイアステートビルにオフィスを構える数十社の企業は、業務再開の時期、そもそも再開の是非を見極めようとしている。
これはニューヨークだけの現象ではない。いまや全米、全世界で見られる。大規模なオフィス空間で働くという、あまりにも当たり前のことが、突然想像できなくなってしまったのだ。
6月22日からの経済活動再開に伴い、人口密度を以前の50%以下に抑えるという条件で、人々はオフィスに戻れるようになった。しかし、ビジネス交流サイトのリンクトイン、高級時計ブランドのブローバ、非営利団体のワールド・モニュメント財団など、エンパイアステートビルに入居する企業のほとんどは、在宅勤務を延長することを選択している。
エンパイアステートビルの運営会社は、テナントにアンケートを実施。このビルで働く1万5000人のうち、経済再開の第2フェーズで戻ってくるのは15━20%に留まると予測している。
だが、テナント企業の関係者に話を聞いたところ、今後も入居は続けるものの、コロナ前と同じ職場環境に戻ると想定している人はほとんどいないことが分かった。
2011年、「カルバン・クライン」などのライセンス管理を行っているグローバル・ブランズ・グループは6フロア分のスペースを15年間契約で借りた。だが、同社はニューヨークで勤務する従業員に対し、オフィスへの復帰を義務づけることはないと伝えている。
リック・ダーリングCEOは、「素晴らしい本社ビル」で働くことの魅力がパンデミックによって霞んでしまったと話す。「それはあまり重要ではなくなったと思う」とした上で、「まさに業績こそが企業の評判を決定することになる」と語る。
同CEOは現在のオフィスについて何の決定も下していないとする一方、ファッション関係の発表に使うショールームは必要になるだろうと話す。