最新記事

世界経済

OPEC+、過去最大規模の減産で最終合意

2020年4月13日(月)09時47分

石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」は12日、5─6月に日量970万バレルの減産を行うことで最終合意した。写真はアブドラアジズ・エネルギー相手とロシアのノバク・エネルギー相。2019年12月、オーストリアのウィーンで撮影(2020年 ロイター/Leonhard Foeger)

石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」は12日、5─6月に日量970万バレルの減産を行うことで最終合意した。新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた原油価格を支えるため、世界の原油供給の約10%に当たる過去最大の減産を実施する。

新型コロナウイルスの感染拡大を抑える取り組みで原油需要が落ち込み、価格が急落する中、産油国の財政が圧迫されているほか、比較的コストの高い米シェール業界が大きな打撃を受けている。

OPECプラスが今回合意した減産の規模は2008年の金融危機時の減産の4倍を超える。2022年4月まで実施されるが、減産幅は段階的に縮小される。

トランプ米大統領はツイッターに「OPECプラスとの大規模な原油合意が成立した。米エネルギー業界の数十万の雇用が守られる」と投稿し、ロシアのプーチン大統領とサウジアラビアのサルマン国王に謝意を示した。

OPECプラスは9日、日量1000万バレルの減産を5月と6月に行うことで合意したが、メキシコが要請された減産幅の受け入れを渋っていた。

メキシコのロペスオブラドール大統領は10日、メキシコの減産を米国が肩代わりするとトランプ大統領から申し出があったと明かし、トランプ大統領もメキシコの「不足を補う」としていた。

OPECプラスの関係筋によると、メンバー国による合意以上の大幅減産や、非メンバー国の減産、各国による戦略備蓄の積み増しなども合わせれば、5日1日から実質的に日量2000万バレル超、世界供給の20%相当の減産となる見通し。これらの数字は合意文書の草案に含まれていたが、最終文書では削除された。

関係筋によると、ペルシャ湾岸のOPEC加盟国は合意より大幅な減産を行うとみられる。

サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は、サウジ、クウェート、アラブ首長国連邦(UAE)が自主的な追加削減を提案したと明らかにした。実施すれば、OPECプラス全体の実質的な減産量は1250万バレルに達するという。

OPECプラスの関係筋によると、非加盟の米国、カナダ、ブラジル、ノルウェー、インドネシアは日量400万─500万バレルの減産を実施する見込み。

同関係筋によると、国際エネルギー機関(IEA)が今後数カ月で日量300万バレル程度のメンバー国による備蓄積み増しを発表する予定。IEAは15日に発表する月次リポートに最新情報を載せるとしている。

米国、インド、日本、韓国はすでに石油備蓄を積み増す可能性があると表明している。

カナダとノルウェーはこれまでに減産に前向きな姿勢を示している。米国は法律上、OPECなどとの協調が難しいものの、原油価格の下落を受けて今年の産油量は自然に大幅減になると説明している。

*内容を追加しました。

[バクー/ドバイ/ロンドン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・新型コロナウイルス感染症で「目が痛む」人が増えている?
・気味が悪いくらいそっくり......新型コロナを予言したウイルス映画が語ること
・善良な9割以外の日本人の行動を変えさせろ
・中国、新型コロナウイルス新規感染者増加 ロシアからの渡航者ら
・TBSとテレビ東京、新型コロナウイルス対策で「全収録中止」 芸能界にも感染者で大英断


20200414issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月14日号(4月7日発売)は「ルポ五輪延期」特集。IOC、日本政府、東京都の「権謀術数と打算」を追う。PLUS 陸上サニブラウンの本音/デーブ・スペクター五輪斬り/「五輪特需景気」消滅?

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中