スポーツ産業の成長が名目GDP600兆円達成への鍵
「観る」スポーツといえば、2019年はラグビーワールドカップが日本で開催されたことが記憶に新しい。多くの国民の注目が急激に集まり、ラグビー日本代表を象徴する「ONE TEAM」は流行語大賞にもノミネートされた。また、東京オリンピックの開催が予定されていることも、スポーツを「観る」ことへの関心を高めている。
「する」スポーツは伸び悩んでいるが、「スポーツ人口の増加がスポーツ市場の拡大を支える」と2016年の日本再興戦略に記載されているように、「する」スポーツは市場全体の活性化に不可欠である。
スポーツ実施率は上昇している
第3次産業活動指数でみた「する」スポーツの市場は伸びていないが、スポーツ実施率3は増加傾向にある。成人のスポーツ実施率について推移をみると、「する」スポーツの人口が堅実に増加していることが確認できる(図表2)。週1日以上スポーツを行う成人の割合は男女ともに増加しており、男女全体での割合は1991年の27.8%から2019年は53.6%まで増加した。また、週3日以上スポーツを実施する人の割合も増えており、頻度にはばらつきがあるが、以前と比較すると運動が習慣化したと考えられる。
手軽に運動を実施できる施設の代表はフィットネスクラブである。フィットネスクラブの利用者数は増加傾向にあり、2019年は2.21億人と2000年の0.93億人から2倍以上も増加している(図表3)。背景には、営業形態の多様化(24時間営業、パーソナルトレーニングの利用、平日限定で低価格、小規模で低価格帯のコンビニタイプのサーキット型ジムなど)により、様々な利用者に門戸が広がり、多くの人が利用しやすくなっていることがある。また、働き方改革による余暇時間の増加や、健康経営の一環として運動を推進する企業が現れ始めていることもその要因として考えられる。
フィットネスクラブは、低価格プランなどの打ち出しによる集客効果などもあり、客単価は低下しているが、利用者数が大きく伸びているため、2019年の売上高は3,400億円と2000年の1.7倍に増加した(図表3)。
需要側からみたスポーツの規模の推移
第2章でみたスポーツ市場の推移(図表1)は、供給側からみたデータであり、スポーツ市場を十分に捕捉できていない可能性がある。ここで家計調査を用いて需要側からスポーツ市場の試算を行ったところ、「する」スポーツ市場が拡大していることが確認できた(図表4)。
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3 スポーツ庁の世論調査において、1年間に運動やスポーツを実施した日数を全部合わせると、どの程度の頻度になるかを質問した結果。運動・スポーツの種目は、ウォーキング(散歩・ぶらぶら歩き・一駅歩きなどを含む)や階段昇降(2アップ3ダウン等)など、例を踏まえつつ選択肢として約60項目が提示されている。