「厳冬期」の中国映画業界、新型ウイルス感染拡大がとどめ刺す?
検閲の痛み
テンセント・エンターテインメントが今年1月に公表したリポートによると、昨年はチケット価格の上昇によって興行収入が640億元(92億ドル)と過去最高を記録したものの、映画館の平均稼働率は過去5年間で最低だった。
政府が基本的に主要外国作品の公開を年34本に制限しているため、市場を支えるには国内の映画製作が頼みの綱だ。しかし、検閲の強化で国内作品も急減している。
習近平国家主席の下、活動家の弾圧、インターネット規制、監視拡大といった社会統制強化の一環として「社会主義核心価値観」に反するコンテンツは、2017年から禁止されている。
業界筋によると、中国建国70周年だった昨年は、特に検閲に対してピリピリしていた。報道によると、少なくとも15本の映画が回収あるいは公開延期、修正を迫られた。
最も大きな犠牲となったのは、クワン・フー(管虎)監督が8000万ドルの予算をかけて製作したとされる第2次世界大戦の叙事詩的作品「ザ・エイト・ハンドレッド」だ。昨年6月に公開が予定されていたが、引退した中国共産党の元幹部らから、台湾に逃げた仇敵・国民党を英雄視しているとの苦情が出て土壇場で、上映中止となった。
製作にさえこぎ着けられない映画もある。北京光線影業と北京京西文化は昨年、ともに23作品の公開を予定していたが、北京光線影業は11本、北京京西文化は9本しか公開できなかった。
創作の自由はすっかり萎縮し、中国の歴史ある映画祭、中国独立影像展は1月、無期限に活動を中止すると発表した。主催者は「本当に純粋なインディペンデント精神を持つ映画祭の開催は不可能だ」と語った。
21年には中国共産党創設100周年を控えているため、近い将来に検閲が緩くなることは期待できない。
給与に関する新規則の導入や、超有名俳優らによる税金対策への厳しい監視も業界を揺らしている。人気映画俳優、范冰冰(ファン・ビンビン)さんは脱税で1億2900万ドルの罰金を科された。
国内メディアの推計によると、こうした中で昨年は国内の映画製作会社1900社近くが破綻した。
中国人俳優Li Binさん(37)は、「厳しい冬」が自身と他の俳優らの仕事に対する姿勢を変えたと言う。
「今だと、だれかから脚本を与えられて台本を手にした瞬間、最初にやるのは撮影不可能な部分を探すことだ。ストーリーはあまり気にしない。それより脚本が検閲を通るか、投資家が資金を回収できるかが気にかかる」
[北京/上海 ロイター]
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